香水は、1日に何回つけ直せばよいのでしょうか。
私がおすすめするのは、朝と午後の1日2回です。
もちろん、香水の種類やつける量、過ごす環境によっても違いますが、香りが弱くなったと感じるたびに、何度もつけ直す必要はありません。
なぜなら、自分では香りが消えたと思っていても、周囲にはまだ十分に香っていることがあるからです。
香りは消えたと思っても、まだ残っている
同じ香りを嗅ぎ続けていると、だんだんその香りを感じにくくなります。これは嗅覚の順応と呼ばれる現象です。
香水をつけた直後にはよく香っていたのに、しばらくすると自分では感じなくなる。
そこで、もう一度つける。少し経ってまた香りが弱くなった気がして、さらに重ねる。
こうしているうちに、知らず知らずのうちにつけすぎてしまうことがあります。
香りが感じられなくなったことと、香りがなくなったことは、同じではないのです。
何度も重ねると、香りのバランスが変わる
もうひとつ、私が頻繁なつけ直しをおすすめしない理由があります。
香水は、つけた瞬間から時間とともに変化していきます。
最初に感じるトップノート、香りの中心となるミドルノート、そして最後まで残るラストノート。
それぞれの香料は揮発する速さが違うため、時間の経過とともに香りの印象が移り変わっていきます。
調香師は、こうした時間的な変化も考えながら、香り全体のバランスを設計しています。
ところが、ラストノートが残っているところに新しい香水を何度も重ねると、残っている香りと新しくつけた香りが混ざり、当初の設計とは違うバランスになることがあります。
特に、持続性の高い香料は肌や衣服に残りやすく、気づかないうちに香りが重くなってしまうこともあります。
ですから、香りが弱まったと感じても、つけ直しは朝と午後の2回にとどめ、あとは香りの移ろいに任せてみてください。

ワンプッシュの量はどのくらい?
ところで、ワンプッシュは何mLくらいなのでしょうか。
実は、アトマイザーのポンプによって、1回に出る量は違います。
以前、50mLの香水が何回使えるのか知りたくて、実際にポンプを押して数えたことがあります。約2,000回で空になりました。単純に計算すると、ワンプッシュ約0.025mLです。
その後、ポンプを新しくしたところ、吐出量は0.10mLでした。50mLなら、計算上は約500回です。同じワンプッシュでも、出てくる量は4倍違います。
また、霧の細かさや、噴霧の角度の広さも違います。
ですから、「何プッシュ」という数は、あくまでも目安です。
たくさん出るスプレーなら、ウエスト、内もも、両腕の約5か所にワンプッシュずつ。それを朝と午後の2回で、合わせて10プッシュくらいが、ひとつの目安です。
数字そのものに正解はないのかもしれません。けれど、はじめて使うときには、ガイドになる数字があると安心するものです。
最初からうまくやろうと思わなくて大丈夫です。使ってみて、少しずつ、自分の香らせ方を見つけていってください。

夜のお出かけには、足首にワンプッシュ
日中は、それで十分です。
でも、夜にデートの予定があるなら、足首にもうワンプッシュくらい。
香りを強くするためではなく、ほんの少し、香りを足すのです。昼と同じ香りで構いません。いくつも香水を持ち歩くわけではないでしょうから。
足を組み替えたとき、足元からふんわりと香りが漂ってくる。
そんな瞬間に、自分自身が少しときめくことはありませんか。
もちろん、特別な日のために、日常とは別の1本を用意しておくのも、気持ちが上がるものです。
香水をつけることで、身なりや振る舞いまで少し引き締まる。
そんな心地よい緊張感も、香水をまとう楽しみのひとつです。
「モテ香水」があるとすれば、それは香りの種類ではなく、まとい方のことだと私は思います。
いつ、どこに、どのくらい、どのようにつけるのか。
そこには、その人らしさや、周囲への心配りが表れます。そんなさりげなさに魅せられるのではないでしょうか。
この考えは、「男性用・メンズ香水の選び方①紳士の嗜み」にも書いています。
お風呂上がりには、違う香りを
もうひとつ、ぜひおすすめしたいのが、眠る前の香水です。
お風呂上がりに、日中とは違う香りを、ほんの少しだけつけてみてください。
ベッドに入ったとき、ふんわりと好きな香りが漂ってくる。とても気持ちのよいものです。
昼間の香りとは違う、安らぎのための香り。
誰かに会うためでも、よい印象を与えるためでもなく、自分自身がくつろぐために香りをまとう。
香水には、そんな楽しみ方もあります。
香水は、少し控えめなくらいがいい
自分にはほどよい香りでも、周囲の人には強く感じられることがあります。特に食事の席や、人との距離が近い場所では、少し控えめにするとちょうどよいでしょう。
以前、香水のつけすぎについて、「香水の非常識(Bad manners)」という記事を書いたことがあります。
それから十数年が経ちましたが、考え方はあまり変わっていません。
ふとした動作で、ほのかに香る。
自分でもその香りを楽しみながら、周りの人にも心地よく感じてもらえる。
そんな香りのまとい方が、私は好ましいと思います。
著者
大沢さとり
PARFUM SATORI 創業者・調香師
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香水のつけ方や選び方、香りについてのよくある疑問を、調香師の視点からわかりやすく解説しています。

