11月に入り、朝の空気がすっかり冷たくなりました。
外へ出ると、肌にひんやりと触れる空気に、香りの感じ方まで変わったように思います。夏の間は少し重たく、むっと感じられた香水も、冷たい空気の中では違った表情を見せてくれます。
秋から冬は、これまで敬遠していた香りを試すのにも、よい季節です。
季節によって変わる香りの印象
香水の香り方は、気温や湿度によっても変わります。
気温の高い夏は香料が揮発しやすく、汗や皮脂のにおいとも重なります。湿度の高い日には、甘い香りや濃厚な香りを、いつもより重たく感じることもあるでしょう。一方、気温が下がると揮発は穏やかになり、香りの広がり方も変わります。
夏には少し強すぎると思っていた香水が、秋になると不思議なほど心地よく感じられることがあります。
香水そのものが変わったわけではありません。香りを取り巻く環境が変わったのです。
しまっておいた香水を開けてみる
例えば、瓶があまりに可愛らしくて、勢いで買ってしまった香水。あるいは、今まで使ったことのないタイプに挑戦してみたものの、つける機会がないまま、しまってある香水。
そんな一本があれば、この季節に少しずつ試してみませんか。
一年を通して使いやすいシトラスや軽やかなフローラルだけでなく、ウッディ、オリエンタル、アンバーといった深みのある香調。バニラやキャラメル、お菓子を思わせる甘いグルマン系の香りも、冷たい空気の中では夏とは違う魅力を見せてくれるはずです。
最初からたくさんつける必要はありません。まずは少量を肌につけて、一日の中での変化を楽しんでみてください。今まで苦手だと思っていた香りが、案外好きになるかもしれません。
ハレの日の香りにも、リハーサルを
昔は、お正月や特別な日のために新しい服を仕立てたり、買ったばかりの服をその日までとっておいたりしたものです。
「仕立て下ろし」「おニュー」「勝負服」。今でもそんな言葉を使うのでしょうか。
香水にも、ハレの日のためにとっておく一本があるかもしれません。クリスマスや年末年始、久しぶりに会う人との食事。そんな日のために、少し特別な香りを選ぶのも楽しいものです。
ただ、洋服と違って、香水は少しリハーサルをしておくのがおすすめです。つけたばかりの香りと、数時間たってからの香りは違います。自分の肌でどんなふうに変化するのか、どのくらいの量が心地よいのか。せっかくのハレの日ですから、香りにも慣れておきたいものです。
冬本番を迎える前の今は、そんな香りのリハーサルにも、ちょうどよい季節です。

衣服の内側から、ほのかに香る
寒くなるにつれて、シャツの上にカーディガン、さらにジャケットやコートと、衣服が重なっていきます。すると、香りの届き方も変わってきます。
肌につけた香水が、直接周囲に広がるのではなく、衣服を通してほんのりと漂う。それは、明るく照らす照明というより、間接照明のような香り方です。
男性でも女性でも、コートの内側からほのかに香りが漂うのは素敵なものです。レストランでコートを脱ぐとき、ふわりと香りが立ち上がる。そんなさりげない香り方も、冬ならではの楽しみです。
ただし、衣服に直接香水を吹きかけると、素材によってはシミになることがあります。基本は肌につけて、衣服を重ねて楽しむ方が安心です。
冬の香水は、つける場所にも気を配って
冬は香水を楽しみやすい季節ですが、気をつけたいこともあります。
例えば、満員電車。厚着をする冬は、夏以上に人と人との距離が近くなります。コートの外側に香水をたっぷり吹きかけると、自分が思う以上に周囲へ香りが届いてしまうことがあります。
そんなときは、肌に近いところへ控えめにつける。あるいは、朝はつけずに、オフィスに着いてから軽く香りをまとう。場所や時間に合わせて香りの量を調節することも、香水を楽しむための大切な心遣いです。
冷たい空気の中では、いつもの香りも、少し違って感じられます。夏には手が伸びなかった香水も、今なら好きになるかもしれません。
しまっておいた一本を、久しぶりに取り出してみませんか。
発信:PARFUM SATORI
創業者・調香師 大沢さとり

