香水の持続時間 はどう決まる?|KOKE SHIMIZUの記録

KOKE SHIMIZUの香水ボトルと、香水の持続時間 の観察記録、調香用ムエット

香水の持続時間 は、どのくらいなのでしょうか。

一般に、オードパルファンは肌の上で5〜6時間ほど香るといわれています。ただし、香水の処方やつける量、肌の状態、気温や湿度などによって、香り方は変わります。

また、持続時間を考えるとき、大切なのは、ただ「におい」が残っていることではありません。その香水の本質となる香りが、時間とともにどのように変化し、どこまで続いているかということです。

2016年、スタッフ教育の一環として、当時発売していたPARFUM SATORIの香水について、持続時間と香調の変化を観察しました。

香水は、つけた瞬間の印象だけでは、その全体像を知ることができません。スタッフ自身が時間を追って香りを確かめ、それぞれの香水への理解を深めることが、この取り組みの目的でした。

今回は、その記録から、香水の持続時間と香りの変化についてご紹介します。

時間を追って、香りの変化を記録する

朝10時にムエットに香水をつけ、その後、時間を置きながら香りを確認します。

記録するのは、その時点での香りの強さと、香調の変化です。

トップノートの明るさがいつまで続くのか。途中でどのような香りが現れるのか。翌日には、何が残っているのか。

基本は翌朝まで観察し、香りが残っているものについては、その後も確認を続けました。

当時のシートには、時間ごとの強さを数字で記入し、その横に香りの印象を書き留めています。同じ年の11月に「第2回」と記されたシートもあり、時期を変えてあらためて確認した香りもありました。

これは、厳密な機器分析による測定ではありません。

ムエットを用い、嗅覚によって香りの強さと変化を時間の経過とともに追った官能評価です。

2016年に、KOKE SHIMIZUをムエットで観察した、 香水の持続時間 と香調変化の表・グラフ

※2016年、室温25度前後でムエットにつけた香りの経時変化を観察した社内記録です。強さは、当時のPARFUM SATORIで最も強い香りを10とした相対評価で、拡散性と香りのボリュームを総合的に判断しています。肌につけた場合の持続時間を示すものではありません。

KOKE SHIMIZUの香りはどのように続いたか

ここでは記録の一例として、KOKE SHIMIZU-苔清水-の経時変化を見てみます。

この資料には、25度前後の室内で、ムエットにつけた香りの変化を観察したと記されています。

強さは、当時のPARFUM SATORIのなかで最も強い香りを10とした相対評価です。拡散性と香りのボリュームを総合的に見て判断しました。

肌につけた場合は、体温や肌の状態、気温、湿度などによって香り方が変わります。したがって、この記録は、肌の上で何時間持続するかを示すものではありません。同じ条件でムエットにつけた香りを比較するための記録です。

肌につけたときの香り方や広がり方については、「香水の匂い立ちとは?」の記事で詳しくご紹介しています。

KOKE SHIMIZUは、1時間後と3時間後の強さが7、6時間後は5、9時間後は4.5と記録されています。

翌日の24時間後にも強さは4。32時間後にもムスクとモスの香りが残り、メモには「やや落ちるが、20種類中最も残る」とあります。

トップノートのシトラスが静まったあとも、モスとムスクを中心とした苔の香りは、意識されにくいほど静かに、長く続いています。私は、それもこの香りのよさだと思っています。

最初の印象と残香の長さは一致しない

実際に時間を追ってみると、つけたての印象と残香の長さは、必ずしも一致しません。

控えめに思われるSILK IRIS-シルクイリス-も、意外に残香の長い香りでした。

一方、HANAHIRAKU-ハナヒラク-は、最初のインパクトに比べると、残香はほかの香りよりも少し短めでした。

ただ、PARFUM SATORIの香りには、全体として共通する特徴があります。

トップノートが終わったあと、静かに、長く続いていくことです。

つけたての香りが強いから、長く残るとは限りません。最初は控えめでも、その香りらしさを保ちながら、静かに続いていく香りもあります。

時間を置いて確かめなければ、その違いは分かりません。

長く残ればよいわけではない

香水の持続時間を延ばそうとすると、どうしても濃い香り、強い香りになりがちです。
しかし、私が目指してきたのは、強さによって長く残す香りではありません。

また、最後に一つの強い香料だけが残っていても、香水全体が美しく持続しているとは限りません。
静かでありながら、ひそやかに香り続ける。そのような香りを目指して作ってきました。

香りは、時間とともに変化します。
その変化のなかで、その香水らしさが失われず、最後までどのように続いていくかが大切です。

持続時間を見るということは、単に何時間「におい物質」が残っているかを調べることではありません。

その香水の本質となる香りが、時間のなかでどのように続いていくかを確かめることなのです。

筆者

発信:PARFUM SATORI
創業者・調香師 大沢さとり


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