ひそやかに広がる香り──「苔清水」が辿りついた森の記憶

屋久島の深い森、苔むした岩の上の「苔清水」のボトル

最近、あるインフルエンサーの方がご紹介くださったことをきっかけに、香水「苔清水」に静かな関心が寄せられています。

いまの流行とは少しちがう、ひとりひとりの記憶にやさしく触れるような広がり。
「初めてなのに懐かしい」「森の中に包まれるようだった」といった感想を、SNSやレビューの中に頂いています。

この香りは、私にとっても特別な意味をもつ作品。
今回は、その香りがどこからやってきたのか、そしてどのようにして生まれたのか、、、その背景をお伝えしたいと思います。

森の気配を、香りに映す

「苔清水」が誕生したのは2005年のこと。
当時、私はまだ屋久島を訪れたことはありませんでした。

けれど、頭の中には、いつからか長く宿っていた風景があります。
静かな森に湧く新鮮な水、苔むした岩肌に落ちる陽の光、湿った空気のなかに漂う清らかな匂い──。

それは現実の体験というより、小説の中で見たような情景です。
そんな“行ったことのない風景”を歩くように、香りをひとつずつ探し出していきました。

『グリーンノートやパチョリ、オークモス、そしてわずかなミネラル感』

ひんやりとした静けさのなかに、やわらかな温かみを感じさせる苔のような質感を目指して、調香を繰り返します。

名前についても試行錯誤がありました。当初は「屋久清水」にしようかな、と思いましたが、より抽象的で普遍的な自然のイメージに近づけたいと思い、最終的に「苔清水」と名づけました。

香りが先に辿り着いていた場所

それから20年近くの時を経て、2024年にようやく私は屋久島を訪れることになります。

苔に覆われた巨岩や、水の音に包まれる森の風景は、まさに私の中にずっとあった“あの場所”そのものでした。
初めて訪れたはずなのに、よく知っている場所。
言葉にはしにくいのですが、「香りが先に辿り着いていた」とでもいうのでしょうか。

「苔清水」にまつわる記事のご紹介

実は、香水インフルエンサー・ミスターフレグランスさんがYouTubeで取り上げてくださったことを受け、反響が広がりました。

▶︎ ミスターフレグランスさんの紹介動画はこちら

この香りについては、これまでもさまざまな角度から綴っています。
以下のリンクから、背景や素材に触れた記事をご覧いただけます。

それぞれの視点から、「苔清水」という香りがどのように育ってきたのか、感じていただけたら幸せです。

小さな自然をまとう

香水は、誰かに見せるためではなく、自分自身の内側に静かに働きかけるもの。
日常のなかで少しでも心を自然に戻す時間が欲しいとき、この香りが森の中で深呼吸をするような静けさをもたらす存在になれたら──記憶のなかで、そっと水を湛えていきますように。


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関連リンクまとめ


大沢さとり
パルファン サトリ 創業者・調香師。
香りにまつわる素材や香水の制作背景を、少しずつお届けしています。