[香水の知識] 香りの変化:香水の匂い立ち その1

香水の匂い立ちとは

香水の「匂い立ち」とは、時間の経過とともに香りが変化していく現象を指します。

デパートなどで香水を試したときに、「最初は爽やかでいいと思ったのに、後から違う香りに変わった」と感じた経験がある方も多いでしょう。これは、香水が単一の香りでできているのではなく、さまざまな芳香分子(においの粒)が組み合わさっているために起こるものです。

香りに変化が起こる理由

たとえば、カレーのルーは一つの素材でできているのではなく、いくつものスパイスが組み合わさることで独特の香りや味が生まれています。香水も同じように、50種類、100種類以上の香料が調合され、時間とともに香りが変化するように作られています。

この変化が起こるのは、各香料の揮発速度(蒸発する速さ)が異なるためです。

たとえば、かけっこをすると、足の速い子供からゴールするように、香水の香りも揮発の早い成分から順に香り立ち、ゆっくりとした香りへと移り変わっていくのです。

ピラミッド型の香りの変化と実際の構造

香水の香りの変化は、一般的には以下のようなピラミッド型の構造で説明されます。(図ーA)

  • トップノート(5〜30分)
    一番最初に感じる香りで、シトラスやグリーン系が多い。
  • ミドルノート(4〜5時間)
    香水の本質的な香りが現れる部分で、フローラルやスパイス系が中心。
  • ラストノート(半日〜)
    最後まで残る香りで、ムスクやウッディ、アンバーなどが多く使われる。

しかし、実際にはトップ・ミドル・ラストが単独で存在しているわけではありません。すべての香料は最初から揮発を始め、時間の経過とともに消えていくのです。(図ーB)

たとえば、レモン、ローズ、ムスクの香料が調合された香水を考えます。

  • トップノートでは、最も揮発しやすいレモンが前面に出ます。
  • ミドルノートの段階では、レモンが消え始め、ローズの香りが目立ってきます。
  • ラストノートでは、最終的に揮発しにくいムスクが残ります。

このため、例えばレモン単独の香りと、レモン・ローズ・ムスクが調合されたトップノートでは、時間の経過による変化がまったく異なります。

計算された香りのバランス

香水は、この蒸発の速い香りと、ゆっくりと香る成分をバランスよく組み合わせて作られています。それぞれの揮発速度を計算しながら処方されることで、香りに奥行きとストーリーが生まれるのです。

この「匂い立ちの変化」こそが、香水の魅力の一つなのです。

by Satori

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