香りにまつわるお悩みにワンポイント・アドバイス 1️⃣

「この香り、自分に似合っているかどうやって判断するの?」
「その香りはフェミニン(マスキュリン)すぎない?」
今回は、アトリエで頂いたご質問への回答をご紹介しています。

コンテンツ

  • 「あなたに似合う香り、どう見極める?」
  • 「洋服を選ぶ感覚を参考に」
  • 「視覚が使えない分、工夫が必要」
  • 「嗅覚の特殊性」
  • 「香りの特徴をとらえる方法」
  • 「自分の雰囲気とのバランスをみる」
  • 「フェミニン(女性的)かマスキュリン(男性的)か」
  • 「嗅覚を使う楽しさと意外な効用」

「あなたに似合う香り、どう見極める?」

最近の六本木のアトリエショップはまるで万博会場のようで、あらゆる国から、あらゆるタイプのお客様がいらっしゃいます。

そんな中、つい先日、外国人の若い男性のお客様が、その香りが自分に似合っているかどうかはどうやって判断したらいいの?と質問してくださいました。
日本人のお客様からは何度か聞かれたことがあったのですが、外国の方からこの質問を受けたのは初めてでした。
一般的に、外国の方は香りに慣れているイメージが強かったので、そう聞かれた時は意外に感じました。が、まだ初々しいくらいのお客様のお顔をみて、日本人以外でも、例えばフランス人のように小さい頃からフレグランスに慣れ親しんでいるわけではないのだな、と親近感が沸きました。

「洋服を選ぶ感覚を参考に」

さて、では、どうやって判断するのか。

皆様も思い出してみてください。
洋服を買いに行ったときにそれが自分に似合っているかをどう判断しますか?

もちろん各々のノウハウがあるので、方法はひとつではないでしょう。
ですが、その洋服を身体に当ててみた時に自分の顔色や雰囲気がパッと明るく見えたり、着ている自分を想像して気持ちが弾んだとすれば、それは似合っているサインです。

香りも同様に、最初の印象が大きな判断材料です。
ただ、香水はトップミドルラストへと向かって変化しますので、全体を通じて好ましいと感じるかを確認できるとべストです。

次に、洋服を選ぶ場合であれば、鏡に映して自分でみることができるので、自分自身が着てみて、自分の雰囲気にあっているか全体のバランスをみて、よいかどうかを判断するでしょう。
具体的には、他のコーディネートや小物との、色や形やテイストが全体的にチグハグになっていないかなどをみるわけですね。

「視覚が使えない分、工夫が必要」

ただ、ここからが問題です。

香りは残念ながら鏡に映してみることができません。洋服のように纏うことはできるのですが、視覚を使って確認することができません。

普段、私たちは約80%の情報を視覚から得ていると言われていますから、これはなかなか辛いところです。ちなみに、残りの情報は聴覚(約10%)、嗅覚・味覚・触覚(合わせて約10%)からだそうです。
したがって、嗅覚から得られる数%の情報を、巧みに解釈することで判断することになります。

「嗅覚の特殊性」

まず、あなたが香りを嗅いだ時の姿を想像してみてください。

道端に咲いている花の香りを嗅いだとき、あるいは、店頭で香水を嗅ぎ比べているとき、それらの香りがどんな香りかを人に説明しようとしてもなかなか言葉が出てこない、というケースが多いのではないでしょうか?

これは、嗅覚情報が他の感覚(視覚、聴覚、触覚など)と異なり、脳の構造上言語中枢を通らないため、そもそも言語化が難しいからなのです。

また、嗅覚情報は、脳の中でも感情や記憶に関わる部分に直接伝えられるため、言葉(言語的なラベル)として記憶されず、感情を伴う記憶、例えば「雰囲気」や「昔の体験」として記憶されるからです。香りは「何の香りか」よりも「どう感じたか」で記憶されやすいわけですね。

「香りの特徴をとらえる方法」

そこで、香りの特徴をつかむ方法としておすすめしたのが、香りから連想される「キャラ(キャラクター)」や「カラー(色)」を思い浮かべる方法です。

– 「キャラ(キャラクター)」をイメージする

香りをかいだ時に、これはどんな「キャラ」の香りだろう?と考えてみてください。
男性?女性?優しそう?オシャレ?クール?弾けた感じ?などなど。

この場合、そう思った理由は言葉で言い表せなくても構いません。
あなたならではの香りのもつ「キャラ」イメージを掴んでください。

【参考:私がイメージする「キャラ」】
沈丁花の花の香り: 細身のサラサラ黒髪ロングの凛とした女性
金木犀の花の香り: ツヤ感あるふんわりスカートをはいてニッコリ笑う女の子
(もちろん、これらは個人的な経験を元に脳が描き出したイメージですので、皆様のイメージと一緒とは限りません。)

– 「カラー(色)」をイメージする

香りをかいだ時に、これはどんな「カラー」の香りだろう?と考えてみてください。
暖色系?寒色系?イエローグリーンが徐々にグレーに変化?などなど。

この場合も、そう感じた理由を言葉で表現する必要はありません。

【参考:私がイメージする「カラー」】
沈丁花の花の香り: ホワイト、ペールグリーン、グレイッシュピンクなど
金木犀の花の香り: イエロー、オレンジ、ベージュなど
(これらも、個人の経験に基づくイメージですので、皆様のそれと異なることもあるでしょう。)

「自分の雰囲気とのバランスをみる」

香りの「キャラ」や「カラー」をイメージしたら、それらと自分のもつ雰囲気、イメージとのバランスをみてみましょう。

– 似合う香りを選ぶ

自分の雰囲気と似た「キャラ」や「カラー」の香りを選ぶと自然に馴染みます。
自分の「キャラ」と似ていたり、仲良くできそうな「キャラ」の香り、自分のワードローブにマッチする「カラー」の香りを選ぶわけです。


– 意外な香りを選ぶ

好ましいと感じる香りで、且つ、自分とは違う「キャラ」「カラー」の香りを選ぶことで、変化を演出できます。
自分とは違う気になる「キャラ」の香り、自分のワードローブに差し色的に使ってみたい「カラー」の香りを選ぶわけです。

「フェミニン(女性的)かマスキュリン(男性的)か」

この香りは自分にはフェミニンすぎないですか?とか、この香水は女性向け/男性向けですか?と質問されるのは、実は外国人のお客様の方が多いです。
おそらく、それらのお客様はフレグランスをこれまでもずっと使い続けてこられていて、これまでのフレグランスの世界では、女性用、男性用と香水を区別するのが一般的だったからなのだと思います。

ただ、最近ではフレグランスの世界でもジェンダーレスの意識が強まってきています。ですので、そう聞かれた時は、香りがフェミニンかマスキュリンかは、各個人の好み以上に意識する必要はなくなってきています、とお伝えしています。

なお、どうしても気になる方は、以下を参考にしてみてください。

– 「フェミニン」な印象を持たれやすいタイプ
「暖色系の中でも特にペールピンクのカラー」イメージや、「甘いお菓子の香り(グルマンタイプ)を連想させる女性キャラ」イメージのあるフレグランス

  例:パルファンサトリのネム


– 「マスキュリン」な印象を持たれやすいタイプ
「スモーキーでダークあるいはチャコールグレーのようなカラー」イメージや、「男性用整髪料の香り(フゼアタイプ)を連想させる男性キャラ」イメージのあるフレグランス

  例:パルファンサトリのミズナラ

「嗅覚を使う楽しさと意外な効用」

実は、嗅覚は加齢によって最も早く衰える感覚の一つということをご存じでしたか?

ですが、意識的に嗅覚を使い続けることで、認知症の予防や早期発見にもつながると考えられています。

特にデジタル社会を生きている私たちは視・聴覚偏重の傾向があり、感覚のバランスが崩れていると言われています。また、そうやって「頭ばかり使う」状態が続くためにストレスもたまりやすくなっています。

そんな中、五感を使うと、身体に意識を戻し、自律神経を整え、マインドフルネス効果が得られると注目されてきています。中でも嗅覚を使うと、記憶や感情に関係する脳領域が活性化され、脳トレ効果も期待できるのだそうです。

自分に似合う香りを探して香りの「キャラ」や「カラー」をイメージするのは案外楽しいものです。ですので、読んでくださっている皆様も、できれば更にそれを誰かに話して、是非、嗅覚を鍛えて、これからも素敵な日々をお過ごしください!

沈丁花の香りにご興味ある方はこちらもご覧ください。

20180304 ジンチョウゲの香り 沈丁花,Daphne

金木犀の香りにご興味ある方はこちらもご覧ください。

20121017 キンモクセイ(金木犀)のにおいはなぜ遠くまで届くのか osmanthus

ニックネーム:T.T

プロフィール:
香水ソムリエ。パルファンサトリ フレグランススクールにてインストラクターをさせていただいていました。
現在はアトリエで接客を担当しております。