アトリエ JOURNAL Vol.2 香りの器 サンダルウッド

アトリエショップの棚に展示されたサンダルウッド。「香りの器」として紹介するアトリエJOURNALの記事

パルファンサトリの店内に、そっと佇む希少品をご紹介する「アトリエジャーナル」。

第二回目は、「 サンダルウッド 」に焦点を当ててみたいと思います。

香りを宿す木、 サンダルウッド

アトリエショップのアンティーク調の木製棚には、香水以外にも気になるものがたくさん並んでいます。

これは何なんだろう?

どういった経緯でここにあるんだろう?

と、思わず見入ってしまうものばかりですが、その中の一つが今回ご紹介する、長さ30cmほどの サンダルウッド です。

香水が好きな方にはおなじみの香料だと思いますが、お香やエッセンシャルイル、高級彫刻の材料として仏像や扇子などにも使われているため、知らず知らずのうちに目にしていたり、触れていたりもするかもしれません。

ただ、原木を間近で見る機会はそう多くはなく、この木に「Sandalwood」と書かれたシールが貼っていなければ、私もそれだと確信が持てなかったように思います。

表皮は削られており、香りと同じく見た目にもすべすべと滑らかでクリーミーな風合いは、どこか神秘的な佇まいを感じます。

また、眺めているだけでなんとなく安堵をもたらしてくれる気がしきます。

芳香は、樹脂ではなく成長過程で蓄えられる精油に由来しますが、古い木になるほどその含有量が高く、芯の色が濃いほど油分豊富で深く甘い香りを持つとされています。


アトリエショップにあるこの サンダルウッド は、天然ムスクを譲ってくださった方から、同じく20年ほど前に譲り受けたということですが、鼻を近づけると微かに柔らかな香りを感じ取ることができます。

木の表面を嗅いでそれですから、心材の部分を嗅いだとしたらまだまだハッキリと香りが残っているかもしれません。

それは一体どんな香りなんだろう。

伐採から数十年の時を経た今もなお、うっすら感じられる香りの息吹。

自然が作り出すものというのは、本当に奇跡の産物であると実感させられます。

アトリエショップに展示されている サンダルウッド 原木の木肌。滑らかな質感や色合いから、長い年月をかけて育まれた香りの器としての魅力を感じることができます。

木の中に閉じ込められた香り

シダーウッドやヒノキなど、木の内部に精油を蓄える植物は他にもあります。

しかし、それらは木の表面にも香気成分が存在していたり、比較的若い段階から精油原料として利用できるものが少なくありません。

そういった意味でも、 サンダルウッド はやはり特別です。

木材であると同時に、「香りの器」でもあるのです。

アトリエショップの サンダルウッド から感じられる香りはごく僅かですが、その芯の部分にはまだ多くの香りが眠っているはずです。

この木を少しだけ削ってみたら、

断面を覗くことができたら、

木の表面からは決して想像できなかった、豊かな香りが現れるかもしれない。

開けてみないとわからない、そのドキドキの瞬間。

そう考えると、この一本の木は単なる展示物ではなく、まるで時と香りを閉じ込めた香水瓶のようにも思えてくるのです。

サンダルウッド が育つ林の風景。香料となる精油を蓄えるまでには数十年から100年もの歳月が必要とされ、その長い時間が深く豊かな香りを育みます。

“時間”を内包する サンダルウッド

大半の香水は、トップノートからミドルノート、そしてラストノートへと移ろっていきますが、サンダルウッド は主にラスト(ベース)ノートとして使用されます。

サンダルウッド といえば、ラスト(ベース)ノート。

当然のようにそう捉えていましたが、原木に触れてみるとその理由がまた違った角度から見えてきました。

育つ環境にもよりますが、 サンダルウッド は精油が採れるようになるまで数十年から100年もの歳月を要します。

それはもう、気が遠くなるような時間です。

そうしてようやく採取されるに至った香りが、トップノートですぐに揮発してしまうわけがないのです。

揮発時間が長く、残香性が高いからベースに使われる。

それは間違いではありませんが、その説明だけでは何かが足りない気がします。

人の一生と同じほどの時間をかけて蓄えられた香りは、「長く残る性質を与えられた」と言うより、「長く残らざるを得ない」ものなのかもしれません。

サンダルウッド がベースノートとして香水に残るのは、その木が生きてきた時間の必然のようにも感じられました。

香水は時間と共に消えるからこそ儚く、美しいものです。
けれど、目の前の サンダルウッド はそれとは逆に、長い年月をかけて香りを完成させ、今もなお芳香を保ち続けています。

その香りが、数時間から一日ほどで消えていく香水の土台になる。

そう考えると、 サンダルウッド の香りに惹かれる理由の中には、私たちが生きてきた「時間」そのものに触れるような感覚もあるのかもしれません。

これからも、この先も。

時を重ねてもなお、香りを失わない サンダルウッド 。

きっとこの先も、切られることも削られることも無く、アトリエショップの片隅でさらに時を刻んでいくのでしょう。

“香水になるもっと前”の香り。

その原点とも言える サンダルウッド が、今日も静かにそこにあります。


発信:PARFUM SATORI
ニックネーム:K.S
プロフィール:パルファンサトリフレグランススクール1級卒業。アトリエショップやPOP UPで時々接客させていただいてます。


▪アトリエに流れている時間を綴っていく「アトリエJOURNAL」
 アトリエ JOURNAL Vol.1 天然ムスク

▪ サンダルウッド については、こちらの記事でも触れています。
 [香水の知識] ラストノート (LAST NOTE):香水の匂い立ち その4

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