市販のバスソルトに「あと一歩」を感じていたころ
パフューム バスソルト を作りたい。その始まりは、毎日の入浴にありました。
一日の終わりに、バスタブに身を沈める時間は、私にとって大切な「切り替え」の瞬間です。
けれど、市販のバスソルトの香りには、なかなか満足がいきません。
香りが強すぎてくつろげなかったり、人工的なフレーバーのように感じたり、そもそも自分の好みではなかったり……。
「もし、香水と同じクオリティの香りで入浴できたら、どんなに心地よいだろう。」
3年前に芽生えたささやかなこだわりと願いを出発点に、試作を重ねてきました。その結果がパフューム バスソルトというかたちとなりました。

香水の原液を、そっとお風呂に落としてみる
最初の実験は、とてもシンプルなものでした。
香水用にブレンドした原液には、どうしてもロス分が出ます。
あるとき、その数滴を、試しにバスタブに垂らしてみました。
お湯の表面から、なじみのある香りがふわりと立ちのぼる。
湯気とともに身体全体を包み込み、湯上がりの肌には、ごく淡い余韻だけが残る——。
「これは、ただの思いつきではなく、きちんとかたちにできるかもしれない。」
そう確信できるほど、入浴と香水用香料の相性は、想像以上に良いものでした。
スタッフと一緒に「お風呂でまといたい香り」を探す
自分ひとりの感覚だけで判断せず、すぐにスタッフにも試してもらうことにしました。
香水用の原液を少量ずつ小分けにし、それぞれ自宅のお風呂で使ってもらいます。
- 香りの拡散性(バスルームでの広がり)
- 残香性(肌残り)
- 入浴時との相性
- 自由感想
何度もアンケートを取り、感想を集めては、候補の香りを絞っていきました。
肌の上とお湯では温度も異なり、拡散の仕方も変わります。
その結果生まれる、微妙に異なる「におい立ち」が、本当に心地よく感じられるかどうか——。
その差を確かめるために、同じ香りを何日もかけて入浴で試してもらう日々が続きました。

バスソルトか、バスオイルか——「形」を決めるまで
香りの候補と並行して、ベースとなる「形」も検討しました。
- バスオイル
- バスソルト
- そのほかの入浴剤タイプ ……
いくつも試作をつくり比べてみた結果、今回のテーマである
「香りをまとう入浴文化を通して、休息のための静かな導入をつくる」という考え方に、
もっとも自然になじんだのが、現在のバスソルトのスタイルでした。
湯面から立ちのぼる香りの立ち上がり、湯ざわりのやわらかさ、使用感のシンプルさ——。
それらを総合して、「パルファンサトリのパフューム バスソルト」という形が見えてきました。

パフューム バスソルト ―ベースに選んだのは「エプソムソルト」
ベースには、エプソムソルトを採用しました。エプソムソルトは化学名を硫酸マグネシウムといい、海水などにも含まれる成分をもとにしたもので、入浴剤として広く用いられています。
もともと無香料のエプソムソルトを使ったことがあり、
お湯あたりがやわらかく、じんわりと温まる感覚が心地よかったことを覚えていたからです。
そこに香水と同じ香料処方を加えることで、
- お湯に溶けた瞬間の香り立ち
- バスルームに満ちる広がり
- 湯上がりの肌に残る、ほのかな余韻
この三つのバランスをととのえることを目指しました。
色、香料の賦香率、エプソムソルトの粒子の大きさ——細かな条件を変えながら、ラボと工場とのやり取りを何度も重ねて、ようやく納得のいく処方にたどり着きました。
パフューム バスソルト を「和紙で包む」という発想へ
次の課題は、「どのような姿で手渡すか」ということでした。
以前から、プラスチックのボトルや箱ではなく、和紙包みにしたいという思いがありました。
- 旅先から飛行機で帰るときにも、かさばらないこと
- 手に取った瞬間に、日本の香水ブランドらしい品格を感じられること
- 使い終えたあとも、紙を捨ててしまうのが惜しくなるような美しさがあること
そう考えると、伝統的な「たとう包み」のような、折りを生かした和紙包装が自然とイメージに浮かびました。

包み紙を「ブックカバー」にするというアイデア
一日の終わりの私自身のリチュアルには、本を読むこと、お香を焚くこと、
枕元に好みの香りをつけたムエットをそっと忍ばせることなどがあります。
「もし、この和紙の包み紙が、眠る前に読む文庫本のカバーになったら——
お風呂からベッドに向かう時間まで、香りの物語が続いていくのではないか。」
そう考えたとき、一気に全体の像がつながりました。
昔、和菓子屋さんの包み紙の裏側に、封筒の型紙が印刷されていて、
それを切り抜いて封筒を作る、という遊び心のある仕立てがありました。
それと同じように、包み紙そのものに「次の役割」を持たせたい。
ブックカバーであれば、切り抜く必要もなく、折りのガイドだけ印刷しておけば、自分で簡単に形にできます。
まずはA4サイズの紙で完結する形を考え、
いろいろな和紙で試せるように、できるだけ汎用性の高い寸法を探りました。

神田から青山へ——紙探しの小さな旅
包み紙の構想が固まると、次は紙選びです。
神田・竹橋エリアにある紙の見本帖のお店のショールームを訪ね、
いくつもの紙見本の中から、手触りや色合いを確認しながら候補を絞っていきました。
その後は、系列店である青山のショールームにも足を運びました。
夏の猛暑の中、住宅街の細い道を歩きながら、それでももっとたくさんの紙を見たい一心で出かけていったのを覚えています。
色味、透け感、手ざわり、折りやすさ——。
どれも、実際に手で触れてみなければわからない要素です。
アルミ内袋のサイズとのバランスも見ながら、最も美しく見える比率を検討し、
紙屋さんにも相談して、最初の案より大きいサイズに調整しました。
型紙を起こし、実際に何度も折っては修正し、ようやく「これなら」と思えるたとう包みが完成しました。
ギリギリで間に合った、東京と名古屋のポップアップ
香りの処方と、和紙の包み。
それぞれの最終調整が終わった頃には、すでに東京と名古屋のポップアップイベントの日程が迫っていました。
工場とのやり取りや紙の最終決定が重なり、
スケジュールとしては「ぎりぎり」の綱渡りでしたが、
なんとか「購入者特典」としての初お披露目に間に合わせることができました。
店頭で、和紙包みを手に取ってくださるお客様の様子を見ながら、
「この佇まいなら、贈り物にも、自分自身への小さなご褒美としても選んでいただける」
そんな手応えを感じました。
選ばれた パフューム バスソルト の5つの香り
こうして生まれたパフューム バスソルトには、
最終的に、ベーシックラインから3種類、パルファンEXから2種類の香りを選びました。
- 苔清水 -KOKE SHIMIZU-
山あいの湧水を思わせる、澄んだグリーンノート。
一日のよどみを洗い流すように、心身を「浄化」するイメージの香り。 - 睡蓮 -SUIREN-
水面に浮かぶ花をイメージした、静けさと透明感のあるウォータリーノート。
灯りを落とした、静かな夜のバスタイムに似合います。 - 紫の上 -MURASAKI NO UE-
源氏物語の姫君を想わせる、やわらかなフローラル。
花びらの衣をまとうように、しとやかな余韻で肌を包みます。 - 薔薇(パルファンEX)
花弁の厚みと蕾の瑞々しさを併せ持つ、奥行きあるローズ。
バスルーム全体を、やわらかな薔薇色の空気で満たします。 - さとり(パルファンEX SATORI)
静かな強さをもつ、繊細なオリエンタルノート。
その日の出来事から少し距離を置き、心をフラットに整えたい夜に寄り添います。
他にも、入浴に合う香りの候補はいくつもありましたが、
まずは「一日の終わりのリチュアル」を象徴する5つとして、このラインナップを選びました。
いつか機会があれば、少しずつ種類を増やしていけたらと考えています。

小さな包みから始まる、「静かな導入」の時間
バスタブにソルトをさらさらと振り入れて、お湯に溶けていくあいだ、香りはゆっくりと立ち上がります。
湯上がりには、和紙の包みを折りなおして、文庫本にブックカバーとしてかける——。
そうして、一日の終わりが「仕事からの解放」だけでなく、
心身を整えるための静かな儀式(リチュアル)として記憶されていくことを願って、
パフューム バスソルトは生まれました。
この小さな包みが、誰かの一日の終わりに、そっとやさしい区切りをもたらすことを願っています。
発信:PARFUM SATORI(パルファンサトリ)/ 創業者・調香師 大沢さとり
■脚注:
エプソムソルトは化学名を硫酸マグネシウムといい、多くの入浴剤の有効成分として用いられ、温浴効果があるとされています。
米国国立医学図書館の医薬品情報(DailyMed)でも、硫酸マグネシウム(Epsom salt)を湯に溶かして浸かることで、こわばった筋肉や疲労した身体を和らげる目的で使用する方法が示されています。
体調やお肌に不安のある方、妊娠中の方などは、ご使用前に医師や薬剤師にご相談ください。
■リンク:
・パフューム バスソルト 商品一覧ページ(各香りの詳細・購入ページは12月1日公開予定です)
・ブランド紹介ページ(PARFUM SATORIについて/ブランドストーリー)
・関連メイキング記事(香水のメイキングストーリー)

