植物としてのカカオ
学名:Theobroma cacao
カカオは、主に熱帯地域で栽培される常緑の木で、高さは4〜8メートル程度です。花は幹や枝に直接咲き、その後にカカオの実が成長します。この実からカカオ豆が得られ、チョコレートやその他の食品の原料となります。
豆から食品になる工程
カカオ豆はカカオの実の中にある種子です。収穫後、豆は実から取り出され、発酵させられます。発酵によりカカオ豆特有の風味が引き出され、次に乾燥、ローストされます。
ローストすることで風味が増し、豆からカカオバターとカカオマスが抽出され、チョコレートやその他のカカオ製品が製造されます。
カカオの天然香料(アブソリュート)の製法
カカオアブソリュートは、カカオ豆から抽出される濃厚で芳香性の高いオイルです。この抽出は溶剤抽出法によって行われ、キュアリング(発酵と乾燥)処理を経たカカオ豆から抽出されます。
キュアリングプロセスによって、カカオ豆のフレーバーは豊かになり、香りが強化されます。また、その成分が溶剤によって効率的に抽出されやすくなります。
生のカカオ豆から直接香料を抽出することはほとんどありません。かつ、キュアリング後に加熱処理を施すこともありません。
非加熱
一方、カカオアブソリュートを採るときは、ローストは施されません。なぜならば熱により、香料としての複雑で微妙なニュアンスが失われることがあるためです。香料用には、キュアリングされた未ローストの豆を使うことで、カカオ本来の芳香成分を残しつつ、よりリッチな香りを抽出することができます。
カカオ豆の色
カカオの実の中の生の豆は柔らかく、通常、白っぽいか、淡い黄色や紫色をしています。
しかし発酵したカカオ豆の色は、暗褐色から黒っぽい色へと変化します。また、発酵によって豆の表面が乾燥し、さらに色が濃くなることもあります。
カカオの香気成分
生のカカオ豆、特にまだ果肉に覆われている状態では、甘酸っぱいフルーティノート。トロピカルフルーツ、柑橘類やバナナを思わせる香りも感じられるでしょう。
また生の状態でも豆自体に苦味があり、その後の製造過程でより顕著になります。
さらに、グリーンな、やや青臭さもあります。
カカオ豆の発酵後、香りは生の時から大きく変化します。
その中には、ビールやパンの酵母のような酸味のある香り、焦げたナッツの香り、ビターなチョコレートやスパイシー、またウッディ、アニマリックなノートも醸成されます。
特に香料になったカカオアブソリュートには、ナッツやローストの香りを持つピラジン類、新鮮な草や果実の香りを提供するアルデヒド類、フルーティーな香りを増すエステル類などが含まれます。
フェロモン類似物質
カカオに含まれるいくつかの化合物には、フェロモンに似た作用があるとされ、歴史的にも強壮剤や媚薬としての利用がありました。
フェニルエチルアミン (PEA): これは自然に存在するアミンで、人間の脳内で幸福感や恋愛感情を引き起こすホルモン、エンドルフィンの放出を促進すると言われています。PEAは「恋の化学物質」とも呼ばれ、興奮や欲望の感覚を高める効果があるとされています。
テオブロミン: カフェインに似た構造を持つアルカロイドで、心臓の活動を刺激し、軽い興奮作用があります。これにより、エネルギーレベルの向上や気分の改善が期待でき、昔から気分を高揚させる成分として知られています。
これらは科学的にはその効能を裏付けるようなエビデンスは判然としませんが、文化的な背景や歴史的な使用法を通じて、そのように信じられているようです。
15世紀からのカカオの歴史
マヤ文明やアステカ文明で、カカオは宗教儀式や貴族の嗜好品として珍重されました。
16世紀初頭にスペイン女王の支援を受けたコロンブスやコルテスが、新航路探検の過程で中南米を訪れ、カカオをヨーロッパに持ち帰りました。カカオはヨーロッパの貴族社会で広まり、特にスペインとフランスで人気を博しました。
18世紀に入ると、カカオはヨーロッパ全体に普及し、19世紀にはスイスでミルクチョコレートが発明され、チョコレート産業が急速に発展しました。20世紀には、大量生産技術の進歩により、チョコレートは広く一般消費者にも手に入るようになりました。
現在では再びチョコレートの高級化が進み、特に品質の高いカカオを使用したプレミアムチョコレートが注目を集めています。まるで食べる宝石のように扱われ、高級スイーツとしての地位を確立しています。
香水におけるカカオアブソリュートの効果
カカオアブソリュートは少量で香りに複雑さを加えます。明るさを強調するために影を入れるような効果や、コクと旨味、砂糖の甘みではない甘さを与えます。
香水「ヒョウゲ」ではさっぱりとしたグリーンの中に深みと甘みを、「コンシロ」ではダウンロウベースの中の落ち着いた重さとして使われています。
カカオを使用している香水
- コンシロ -KONSHIRO-
- ヒョウゲ -HYOUGE-
- サトリ -SATORI-
SATORI
KON SHIRO
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