ジャパニーズウイスキー『ミズナラ』から生まれた香水:芳醇な樽香の世界

ジャパニーズウイスキーにインスパイアされた日本生まれの香水 ミズナラ

『ミズナラ-MIZUNARA』香水の誕生

2018年にフレグランスブランド「パルファン サトリ」から発表されたこの香水は、日本固有の樹木ミズナラと、その木で熟成されたジャパニーズウイスキーの豊かな香りからインスピレーションを受けています。

新緑の風と芳醇な樽の香りが融合したシェアフレグランスとして、初めは「ハンサム」で落ち着いた香りが男性向けと感じられましたが、次第に多くの女性にも支持され、今では幅広い層から愛されています。

ミズナラの木とは

ミズナラ(学名Quercus crispula Blume)は、日本のブナ帯森林を形成する落葉樹です。ジャパニーズオークとも呼ばれ、その樹齢が1000年を超えることもあります。寿命に比べてあまり大きくならない理由の一つは、栄養を主に根に回すためです。その堅く重い木材は建築材や家具としても使用され、森林ではマイタケなどのキノコを育てる恵み豊かな樹木としても知られています。

 

香水のインスピレーション

この香水の旅は、六本木のアトリエ近くにある「水楢佳寿久/MIZUNARA CASK」というオーセンティックなバーでの発見から始まりました。

店内に漂うウッディな香りと樹齢500年の水楢の木で作られたカウンター。そしてミズナラ樽で熟成されたウイスキーの独特の香りが、新たな香水を創造するきっかけとなりました。

バルサム、カストリウム、アンバーなどの香料を試しながら、調香のためにアトリエとバーを行き来し、ユニークな「モルトコアベース」が誕生しました。

 

香水のハート: モルトコアベースの製造

この香水の核となる「モルトコアベース」は、ウイスキーの熟成過程を表現しています。

焦げた香ばしさとスモーキーなドライ感を基調とし、樹脂の甘さとアニマリックなレザー感が複雑に絡み合います。伽羅と白檀のウッディな香調がこれを引き立て、独特の深みを与えています。

この複雑な香りの基盤には、スモーキータバックなイソブチルキノリンや、甘く濃厚なトルーバルサム、レザリーなラブダナムを配合し、メタリックなアンバーで現代的な印象を加えました。

さらに、ウイスキーを口に含んだ際の灼熱感をコニャックオイルで再現しています。  

 

香りの源への旅:赤城山のミズナラ林

フィールドリサーチは、群馬県の赤城山にある小沼とその周辺のミズナラ林で行われました。

ここは『ミズナラ-MIZUNARA』香水の香調に大きな影響を与えた場所です。湖を囲む新緑の原生林が、香水のトップノートの直接的なインスピレーションとなりました。

湖面の光がさざ波と共に揺れ、光は葉に反射して煌めきます。遠くの湖面は青鈍色に見え、その深みからミズナラの力強い意志が感じられるかのようです。

この自然の情景から得たインスピレーションは、既に完成していたモルトコアベースと結びつき、香水『ミズナラ-MIZUNARA』のラストノートに力強い印象を加えました。

 

香りのポートレート:『ミズナラ-MIZUNARA』

『ミズナラ-MIZUNARA』は、清々しいガルバナムグリーンとハーバルアコードで心地よいスタートを切ります。木の温もりを感じさせるウッディノートが重なり、次第にモルトのドライでスモーキーな香りと、焦げた香ばしさが広がります。香りのフィナーレでは、伽羅と白檀が深みを増し、固いアンバーが力強さを添えて全体を引き締めます。

この洗練された香りは、ビジネスやフォーマルな場での装いにぴったりです。夜のデートやパーティーにも最適で、男性はウエストや心臓の近くに、女性は特に内側の太ももなどの肌につけることで、ドライアンバーが繊細に香り立ちます。

香りは身体を通してゆっくりと上昇し、顎から首筋にかけてのラインを際立たせ、ひときわ美しい印象を与えます。

 

ミズナラ樽の試行錯誤からジャパニーズウイスキー誕生へ

ミズナラの木はその固さと加工の難しさから、元々はウイスキー樽の材料としては考えられていませんでした。しかし、第二次世界大戦中の資源不足がこの木をウイスキー樽として見直すきっかけとなりました。海外からのオーク材の供給が途絶えたため、代替品としてミズナラが使用され始めます。この時期に、職人たちはミズナラの木の特性を理解し、適する樽を作る技術を磨いていきました。

ミズナラ樽で熟成されたウイスキーは、独特の「伽羅(きゃら)」と「白檀(サンダルウッド)」の香りを帯びることで知られるようになり、これが日本のウイスキーに独自の地位を築く手助けをしました。事実、ミズナラ樽の使用は、日本を世界のトップモルト生産国の一つに押し上げる一因となりました。今日では、ミズナラ熟成のウイスキーは、その豊かなアロマと味わいで高く評価されています。

この歴史的背景を通じて、『ミズナラ-MIZUNARA』ウイスキーは単なるお酒ではなく、日本の創造性と適応の象徴として位置づけられます。それは、困難を乗り越え、独自の美を世界に認めさせた日本の職人技の証です。

香水『ミズナラ-MIZUNARA』もまた、ミズナラ樽で熟成された日本のウイスキーの特性、その歴史と独特のアロマからインスピレーションを受けています。ミズナラウイスキーと共有する豊かな香りを通じて、職人技の精神への敬意を表現しています。

 

香水「ミズナラ-MIZUNARA-」のページ→ミズナラ 

 

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