PARFUM SATORI®︎

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2009.09.02

「ヘルスケア・レストラン」9月号

ヘルスケア・レストランに取材記事が掲載されました。

四季折々の気候風土に合った日本人ならではの香りを提案
大沢さとりさん(調香師)

〔百種以上の香料を調合し、一本の香水が出来上がる〕

―― 香水とはどのようなプロセスで出来上がっていくのですか?

 香水はよく使用する香料だけでもおよそ500種類はあって、すべての香料を数えると2千種類を超えます。その素材を50種類、100種類と調合することで、一本の香水が出来上がっていきます。また、香水の世界にも処方箋という言葉があり、一つの処方には10%以上加える香料もあれば、あるものは10万分の1しか入れないという具合に、配合割合もさまざまです。
 たとえば「花のゆりかご」というテーマの香水をつくるとしましょう。いろいろなお花が一つのバスケットに入っているイメージです。「ゆりかご」ですから、濃い色の花ではなく、淡いピンクや淡いブルーの花々が思い浮かびます。すると、全体がパステル調で、かすみがかっているといった、具体的なキーワードが出てきますね。そこで、仮に3~5種の香料を選び、これをさまざまな比率で組み合わせて、まずピンクの花にぴったりと思う香りをつくります。ブルーの花、グリーンの茎、バスケットの部分など、同じように一つの香りにつき数十回のトライアルを重ねながら、それぞれのイメージを表現する香りをつくります。こうして出来上がった一つひとつの香りを、さらに複雑な配合比率で積み上げ、全体の調和をとり、最終的に一本の香水にしていくのです。

―― 毎回、色をもとに香りをイメージしていくのですか?

 そうともかぎりません。香りは目に見えないものですから、色でも音楽でも映像でも、何に結び付けても自由です。教室の生徒さんたちは、「源氏物語の姫君12人」とか、「日本の伝統色12色」とか独自のテーマでシリーズの香りをつくっています。なかには「歌川広重の東海道五十三次」をテーマに香りをつくられた方もいらっしゃいました。

〔香りという媒介をとおし真の日本文化を伝えたい〕

―― さとりさんは、日本の風土や日本人の気質に合った香水づくりをライフワークとされています。

 香水の起源はヨーロッパにあります。今でこそ海外のあらゆる香水が手に入りますが、そもそも欧米の香水は、長い歴史の中で乾燥した気候や、欧米人の濃い体臭に合うようにつくられています。自己主張も強いですよね。そのため日本の高湿度や、控えめで周囲と調和することを好む日本女性の生き方に合うかというと、少しずれがあると思います。やはり、日本には四季折々の風土があり、私たちの気質に合った穏やかな香りがあるはずですよね。
 今回創った「さとり」という香水は、日本の「道」の精神を表現したいと考え、7年の歳月をかけて創作しました。香りの中心は伽羅という香木。やわらかな光が差し込む和室で、さらさらとした衣擦れの音がきこえてくるような、日本女性の立ち居振る舞いを込めました。また、容器には有田焼、組紐、桐箱など、できるかぎり和の伝統工芸を用いました。香水を媒体として、真の日本文化を広く海外にお伝えできればと思ったんですね。

〔栄養素にこだわるだけでは心までは満たせない〕

―― 最後に、食生活のこだわりについて一言お願いします。

 食事って、食事そのものだけじゃなくて、器や何気ない生け花、サービスしてくれる方の気持ちとか、すべて合わさってはじめて充実するものですよね。なかでも私が一番大切だと感じるのが、お食事を出して下さる方とのコミュニケーションです。その方の心遣いや気持ちひとつで不思議と味って変わってきますよね。きっと、ただ栄養素にこだわっただけでは、心の栄養まで満たすことはできないのでしょうね。


子供のころから植物や花が大好きだったさとりさんは、アロマやハーブを扱ううちに、自然と香りを扱う調香の世界へ身を置くようになった。
何百種類にも及ぶ香料をかぎ分け、絶妙なバランスで調合し一つの香りをつくりだしていく調香師。
そのほとんどが、香料会社に勤め、洗剤や芳香剤などの製品開発に携わるなか、さとりさんは香水だけを扱う、世界でも数少ないフリーランスの調香師として活躍している。


元スイス・フィルメニッヒ主任調香師、丸山賢次氏に師事。以来、香道などの和の伝統を香水に活かし、ヨーロッパからみたオリエンタルとは一味違う、「日本人に本当にふさわしい香りのクリエイション」をライフワークとしている。
代々木にて香水のサロン「パルファン サトリ」をオープン。オートクチュール香水の制作、講演、調香の教室などを中心に活動。ほか、香りのイベント活動として、ガラス作家や宝飾品との共同展示会、美術館などのショップ展示のプロでユースも数多く手がける。フランス調香師協会会員