Parfum Satori

フレグランス メイキング・ストーリー making storyの最近のブログ記事

「織部」Oribe Fragrance story ② 織部の香りができるまで

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よく「名前と香りのどちらが先にできるのですか?」と聞かれるが、その時々で違う。

先にテーマが決まって、香りがその目標に向かっていくこともあるし、出来上がってからしっくりくる名前を付けるのに苦労することもある。このときの作成途中の仮称は「抹茶」で、正式なネーミングは後からついた。できあがったときに、「抹茶」では工夫がないと思い、あれこれ書いては消しているうちに、「織部(おりべ)」という名前が浮かび上がったのである。


「古田織部(ふるたおりべ/重燃)」は、千利休の高弟の一人で16世紀の茶人である。千利休の茶道を継承しつつ「人と違うことをせよ」という教えを忠実に実行したと評される。大胆で自由な気風で、美の新しい価値観を茶の世界に作り、作庭、建築、焼き物など「織部好み」という一大流行をもたらした。400年も前にデザインされた濃い緑と黒の焼き物は今なお新しい。


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私が初めて織部の名を知った時は定かではないが、母が使う茶器を見ながら覚えたものと思われる。
その後、12歳で正式に入門し茶道を習い始めた。師匠のもと、あるいは母のそばで茶に接しているうちに、折りに触れ少しずつ聞きおぼえた物語りが、いつか身の内に降り積もって、数十年後にこの香水の名として浮かび上がったものであろう。いわばこの名は、母の手柄である。


織部についてもっとよく知りたいと、改めて本などを読んだのは、香水に名を付けた後であった。司馬遼太郎は「おそらく世界の造形芸術史のなかで、こんにちでいう前衛精神をもった最初の人物」と評している。

なぜ香水名が「利休」でなく「織部」なのかと尋ねられたことがある。ひらめきは理屈ではないが、しいていえば利休はよく知られており、織部を知っている人は少なかったからではないか。「人と同じことはしたくない」と思う。

「さとり」という香りが沈香木の再現のみならず、「和室の清浄な空間、そこに入る人の佇まい」をも表現したかったのと同じように、「織部」の香りもただ爽やかなだけのグリーンティとは一味違う、日本の茶の香りと、「茶を点てて振る舞う心のありよう」まで捉えたかったのである。



「織部」はわずかに苦い。シス-ジャスモン(cis-Jasmon)が効いている。これはジャスミンノートに入る単品香料だが、渋み、苦みを感じさせる香料である。

そして「旨み」としてバイオレットリーフを少し入れている。バイオレットリーフの香調はキュウリっぽいといわれるが、私には乾物の、例えば昆布出汁の匂いを感じるから。 

すっきりとしたグリーンだけでは少し膨らみが足りないので、フローラルを合わせてボディ感を出した。

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「茶の木」も「さざんか」も「椿」も、同じツバキ科の植物である。サザンカは晩秋に咲き、椿は春にかけて咲く。そしてお茶の花が咲くのは12月。白い、小さなツバキのような可憐な花である。
香りも良い。サザンカの香りに近く、ヘディオン(Hedion)という香料の匂いがする。ヘディオンはジャスミンの要素でもある。それゆえ「ティーノート」と「ジャスミン」の香りは合いやすい。

そこでジャスミンabs.を足して、花のボリューム感を出した。 

また、お薄茶(うすちゃ)を点てた時の泡立ちとパウダリー感のために、イリスバターを入れ、他にも様々な天然香料が入り、単調になりやすいグリーンタイプに複雑さを与えた。 


私にとっての緑茶、ことに抹茶はさわやかさと苦味と旨味のバランスが良さであり、豊かさであると思っている。

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我が家では毎朝、抹茶を飲む習慣がある。振る舞うわけでなないが、自分のために準備を整えて飲んだ時にはすっきり目覚めて心も改まる。とはいえ「毎朝の一服」として、インスタグラムで写真をアップしているように、それは誰もが季節を楽しむのと同じような気楽なもの。

茶道では11月は「炉開き」の月。茶事に「織部」と名のつく焼物を使うきまりがあると言われているが、「織部」の香水は、日々、心が改まる時々で心地よく皆さまのまわりで香っていられたらと願っている。


 


バラ色の雲、ニュアージュローズ Fragrance story

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南仏のバラ色の雲、ニュアージュローズという名の香水。


人工的でなく、かといってアロマのようなシンプルなブレンドとも違う。質のよい香料を「過不足なく」丁寧に組み合わせた「処方」、それが命題。


パルファンサトリの香水は全部で19種類。たくさんの作品の中から選んで、17年かけて少しずつ世の中に出してきた。
私にとって、どの香りもそれぞれに思い入れがあり、どれが一番好きとは決められない。

でもあえてこの季節に好ましい香りがあるとすれば、「ニュアージュローズ」。自分が女性らしくありたいと思うときにつける香りである。




つけたてはフレッシュ。でも、そのあとは時折、柔らかく密(ひそ)やかに香って、周囲を困らせることはない。香りがリフレインするたび、自分が女性であるということを自覚できる、そんな香りなのだ。






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南仏コートダジュールの夜明けや夕暮れどき、空のキャンバスいっぱいにバラ色とスミレ色が交差し、やわらかな雲の波間から海へと光が差し込む...そんな美しい情景を香りに託しました。

目を閉じて香りをまとうと、心にやさしい色と輝きがひろがり、新しい旅へと誘われる...。

ニュアージュローズは人生の喜びや美しさを情緒豊かに感じる女性のための香りです。


ハナヒラク、Hana Hiraku  第⑧話<完結>

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こうして、香水「ハナヒラク」ができる途中には紆余曲折(うよきょくせつ)があり、
2016年10月15日にようやく世に送り出す事が出来たのである。

今朝はお礼がしたくなり、気が付けば新宿御苑の朴(ホオ)の木に向かっていた。

透明な秋の日を浴びて、まだ葉は青さを保っている。



新宿御苑に通い始めてもう10年になる。
大きな樹は、心の拠り代(よりしろ)。

朴(ホオ)の木は、
巡りくる春、夏、秋、冬を見せ続けることによって、
誰しもの夜は明けて、必ず朝が来るものだと教えてくれた。

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朴の木の下で考える。

私の「ドライオリエンタル」の考案は、日本の気候風土で生まれ、醗酵(はっこう)し、
香水のタイプに醸成した。

乾いているけれど、砂漠の砂のようにさらさらではない。
腐葉土のように、ほっこりと暖かい和のオリエンタル。


寒い日には襟元からふわふわと香って、心を温めてくれるに違いない。


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「そういえば、マグノリアのイラストを書いたことがあった。」
帰路、御苑の林を散策しながら思いだした。

大昔の調香ノートを引っぱり出し、発掘したのは20年以上前に私が書いたスケッチ。
下の方に、magnoliaというつづりと、右のページには簡単な処方が書いてある。


ホワイトフローラルが中心となった、香料10点余りの短いベース。
今みると粗いけど、懐かしいな。。。


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朴の木をはじめとする、マグノリア類への熱い思いはずっと昔に始まっていたけれど、
「ハナヒラク」に本格的に取り組んでから、ちょうど1年。

どこで完成と決めるのはいつも難しいけれど、ひとつの到達点には届いたと思われる。


秋が実りの季節だとすれば、

再び、私の引き出しに「喜び」と呼ばれる種子を集め、
別のトレイの中からは「ベース」というタマゴのいくつかを孵(かえ)し、
「次の香り」を育て始めなければならない。


冬がやってくる。



        ー了ー


ハナヒラク、Hana Hiraku⑦処方と香料その3 チュ-ベローズTuberose 

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チューベローズは肉食系の香りだ。

チュベローズと口ずさめば、名前の音の響きは可愛らしく、白く可憐な姿からは、清らかな乙女を想像しそうだ。

しかしその花に近づき匂いを吸えば、ぽってりと濃厚なミルク・ラクトニック感、アニマリック感があり、
グイグイとした押しの強さがある。

さらに香料になったチュベローズAbs.には、強いグリーンノートの奥の方にハムのような、コンソメのような食欲をそそる塩辛さも感じられる。



南仏、グラースの香料会社の隣の敷地には食品工場がある。
夕方になりラボから出ると、コンソメの匂いが漂って来て、猛烈におなかがすいてくる。

チュベローズを嗅ぐと、いつもそんなことを思い出すのだ。

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「ハナヒラク」は、ボリューミーなホワイトフローラルに奥行きを出すため、この塩気とコクのあるチュベローズを隠し味的に重ねている。


それはドライなラストの、味噌や醤油の香りや、アンバーにつながっていく。



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チュベローズの香りを調べれば、甘く濃厚で重いとか、セクシーなどの言葉がよく見られるけれども、「食品的である」と、感じたのが自分にとって重要なキーワード。


・チュベローズはホワイトフローラルで、ハムのコンソメゼリー寄せの匂いがする。

・「ハナヒラク」のメインテーマである朴(ほお)の木は、トップにメロン調のフルーティ感があり、ボディはホワイトフローラルの香りである。

・生ハムとメロン、は美味しい組み合わせである。


さらに、朴の木の葉で、味噌を包んで焼く朴葉味噌があり、味噌や醤油といった発酵食品にはアニマルな要素がある。

と、いうわけで花の香りを表現するために、アニマルや、甘い果実や、お菓子以外の食品素材が合わさるのは、全く自然なことである。



ジャンル違いの知識が一瞬にしてつながる。
しかし、ただの思いつきではない。

成長過程での実体験の記憶と、香料のキーワード、これの積み重ねがアイデアのもととなる。

そして謎解きのように、理屈は後からついてくる。


香水の名前と香りが追いかけ、追い越していくように、アコードのアイデアとイメージもまた、もつれあって香りを育てていく。


香りを作るというのは、作曲にも、作陶にも、料理にも似ているって思う。



「ハナヒラク」が誕生するまでの過程を思い出しながら、徒然(つれづれ)に書いているこの一週間。

明日、発売。




ハナヒラク、Hana Hiraku⑥ ,処方と香料absolute&essその2

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ハナヒラクのドライ感を出しているのはカモミールブルー。

とても個性的な香りのこの香料を、常識外れと言われるような量を入れた。
多量のカモミールに多量のジャスミンをぶつけることで「力(ちから)」のバランスを取っている。


カモミールは小さなキク科の植物で、香料にはジャーマン種とローマン種があり、花はどちらも白い。

カモミールブルーと呼ばれるのは、ジャーマンカモミール種から採取された香料のことである。
なぜ白い花なのに「ブルー」と呼ぶか、というと、これは成分のアズレンのせいで香料が青いため。



ちなみに、コートダジュール(Cote d'azur)のアズール(azur)は明るい青を意味する。
アズレン(azulene)の名前も青に由来する。



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「ハナヒラク」の香水が、淡い翡翠色なのは、黄色の香料に青いカモミールの香料が入っているから。

右隣にある香水と比較すると碧色がはっきりわかる。
右が無色に見えるのは、イリスなど白い色の天然香料が多いためである。




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カモミールブルーは花の香りというより、塩辛さと植物性のアンバーノートを持つ。


まだ香料の勉強を始めたころ、この香料には手焼きせんべいの要素・・・乾いた醤油の香りがする。。と思ったものである。

味噌や醤油から直接香料を取るわけではないので、組み合わせで作ってみたいと何回も処方を書いた。
カモミールブルーを中心にしたベース、それは私の処方の引き出しに、何年もしまってあったものだ。



味噌、醤油、日本酒、麹、
世界の香料業界で、日本の発酵食品の匂いが注目され始めて久しい。

子供のころから親しんできたそれらの香りは、日本で生まれ育ったからこそ作れるのだと思いたい。

この不思議な香りをファインフレグランスにほんの少し潜ませる、それは日本人には懐かしく、海外の人には新鮮な驚きを与えるに違いない。


どこにでもある香りではなく、しかし奇をてらったものではなく、香水として完成されたもの。
私が自分でつけたい香り、つけていて心地よい香り。

少しずつ進化する、それがパルファンサトリのコレクション。






ハナヒラク、Hana Hiraku⑤ ,処方と香料absolute&essその1

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「ハナヒラク」はホワイトフローラルのこっくりとしたラクトニックな香りと、フルーティな甘さ、味噌や醤油の鹹(しおから)さとドライなアニマルノートが骨格になっている。

この不思議な香りを心地よく表現するために、天然の花の香料を、種類も量も贅沢(ぜいたく)に使った。

ジャスミン(jasmine abs.)、マグノリア(magnolia oil)、チュベローズ(Tuberose abs.)、イランイラン(ylangylang oil)や、カモミールブルー(chamomile blue )、イリス(Iris butter)、ローズ(Rose ess)など。



本来、天然香料は、入れるほど良いというわけじゃない。
すべてが天然香料では表現の幅は狭く、野暮ったくなる。

過不足なく、、、最適なバランス、組み合わせが大切なのだ。

天然香料は、単品香料のストレートな強さを柔らかくまとめたり、
重ためなオリエンタルを軽やかに品よく立たせる力がある。


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ハナヒラクの主要なイメージ、マグノリア(モクレン、木蓮、木蘭)の仲間の花は、少しずつ異なるものの、どれも強い香りがする。

ざっと上げると、コブシ(写真上)、シデコブシ、ハクモクレン、モクレン、バナナの匂いのカラタネオガタマ、純白の大輪タイサンボク、オオヤマレンゲ、シャンパカ、そして1枚目の写真、マグノリア類で最も大きな花「朴の木(ほおのき)」がある。



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ハナヒラクでも使われているマグノリアオイル。
上の写真は銀厚朴(ギンコウボク/Michelia ×alba )といい、マグノリアオイルはこの花から得られる。

モクレン科オガタマノキ属の常緑高木で、ホワイトシャンパカとか、白玉蘭(ハクギョクラン)の別名もある。 

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香料になったマグノリアフラワーオイルは甘く、ブチブチと熟れて発酵したベリーのような香りがする。
天然の花の香料でフルーティ要素を持つものは珍しい。


熟れた果実のトップノートが終わると、すぐにセージのようなハーバルな香りが強くなり、この二つの取り合わせが妙な感じの香料だ。

また、caryophylleneの渋い枯れたウッディな匂いがする。



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主要なイメージのホワイトフローラルを作るのに、マグノリアオイルだけでは厚みやミルキーな滑らかさが表現できないので、「ハナヒラク」にはジャスミンabs.をたっぷりと、本当にたくさん使った。

この天然ジャスミンは、雑味がなくきれいな匂いたち。

そしてチュベローズ、イランイランを加えコクを出している。



ホワイトフローラルタイプは、夏や南国を思わせる花の香調ではあるが、日本では秋から冬にかけて肌につけると、とてもきれいに香ると思う。




はなひらく,Hana Hiraku ④香水のネーミング

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香りを作るときに、イメージが先ですか?名前?それとも香料から決めていくのですか?
そう聞かれることがよくある。


それはどれも正しくて、その時々によるし、両方が追いかけ追い越しながら香りができていくこともある。

「ハナヒラク」は、仮の名前があり、香りができ、後から正式な名前が付いた。
そして香りは大きく変更されたのである。



最初の名前は「エパヌイール(épanouir、咲かせる、輝かせる)。

この名前にもちょっとしたエピソードがあって、
数年前、フランスに滞在しているときに
「仕事をしていて何が一番楽しいのか?」
という話題になり、

「お客様と香りのお話ししているでしょう、ムエットについた私の香水をかいだ瞬間に、相手の顔がぱっと明るくなるの、その表情でいろんなことが報われるのよ」
と説明しながら、一言で何かぴったりの言葉がないかって頭の中で探していて、

「そう、エパヌイール!」
という言葉が私の口から出てきたときに、

その人が、
「エパヌイールか!いい言葉だ」
と、懐かしい名前を思い出したような表情をしたのを見て、
私にとっても特別なことばとなり記憶に残った。


そして、新しい作品のテーマは「木の花」。
春から夏にかけて、いろんな種類の木が次々と蕾を付け、白い花がどんどん開いていく。

香りを作りながら、顔が花のように輝く表情と「エパヌイール」という言葉が重なって思い浮かんだ。



香水の仮の名前は「エパヌイール」
でも、それはフランス語。
音はかわいいけど少し覚えにくく、意味が伝わりにくい。

やはり最後には日本語で名前を付けたくて、10も20も候補が挙がっては消えた。

しっくりくる言葉が浮かばないまま、エパヌイールの香りはできていく。
5月には発売する予定なのに。

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2月になった。
毎朝の一服、抹茶を点てようとしていると、母が自作の茶杓(ちゃしゃく)を奥から出してきた。
竹の茶杓入れには「花開」と書いてある。

「これ、何と読むの?」
「ハナヒラク」


はなひらく。。。
何回もつぶやいてみる。
音に希望があって、明るくていいなあ。
それに、エパヌイールとも通じるし。

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花咲く、花開く、どっちにしよう。
ハナサク、ハナヒラク、やっぱり、ハナヒラク。

凝り過ぎていなくて素直な感じ。

こうして、香りに名前がついた。
香水のラベルもできて、試作のボトルに貼ってみる。


名前がつくと、それまでなんかもやもやしたものが、しっかりとした形を持つ、人格を(香格?)を持つような感じがする。

正式名がついてみると、一度は完成したと思った香りなのに、、、これでは線が華奢(きゃしゃ)すぎる。
言霊(ことだま)というのかな。


どうしても、納得のいくものにしたくて、作り直すことにした。
なぜならばこれは私の香りだから。

春からもう一周、辛夷、ハクモクレン、朴の木など、白い肉厚の花が「ハナヒラク」のを観なければ。


そうしてハナヒラクは、予定から5か月遅れた10月15日に世に出ることとなった。






ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の葉③Magnolia obovata

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朴(ほお)の木の学名はMagnolia obovata、(マグノリアオボヴァタ)

オボヴァタというのは、ラテン語の「倒卵形」という意味である。

卵を逆さにしたようなこの大きな葉の形から学名は由来している。


この楕円の葉は30~40センチあり、比較すればこの木の雄大さがわかるだろう。
花も葉も、日本最大級の「日本特産種」である。

まだ春の葉は柔らかく、すべすべとシルクの手触りがする。

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ここの朴の木はかなりの老木である。
幹は満身創痍だ。

それでも、いっぱいに広げた枝先には、毎年5月、雄大な花を怒涛(どとう)の如く咲かせる。

ひとつずつの花の命はそれほど長くない。
しかし次々と咲き続け、100か200か、、、もっとかもしれないが、3週間ほどは花に会いに行ける。




そして咲き初めの花のフルーティな香り、咲き終わりのラクトニックな香りが混ざり合って、樹を中心とした香りのドームが出来上がる。

時折、初夏の風がひと群れの香りをさらって、遠くの人々へ運ぶのだ。


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花が終わった梅雨の時期は人がいない。
雨の中、傘をさしてこの樹の下で立ちつくしたこともある。

大人が泣ける場所って、そうそう見つからないものだから。




私はこの樹がとても好き。
花の時期はもちろん、夏の日差しを遮る大きな木陰や、グレイに乾いた巨大な葉が落葉し、地面を覆いつくすころも。

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ほらね、桜の落ち葉に比べて、朴の木の葉はこんなに大きい。

これが全部木の下に落ちて、多くはここで朽ちて土になり、
あるものは風で運ばれてほかの木の栄養になっていく。


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100年、200年、1000年を経た巨樹は、私たちの人生よりずっと長い。



そして毎年、芽吹き、咲いて、咲かせて、散って、、、そして循環の中で土になる。

生まれ、育ち、死んでいく、いわば1年という短いサイクルで、生涯を繰り返すのだ。



春夏秋冬、植物の輪廻(りんね)には、いつも生き方の中心軸がある。



四季のある朴の木を見ていると、

そう、そう思うのである。









ハナヒラク、Hana Hiraku ,朴(ほお)の木の花②

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初夏に咲く朴(ほお)の木の花。

子供の頭くらいはあるこの巨大な花は、
崇高(すうこう)と言ってもいい。

遠くに木の姿が見えるころから、香りはすでに届いている。
あたり一帯に拡散しているのだ。

しかし私は近づき、(触らずに)カップを抱えるようにして、中心部に顔をうずめる。



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咲き初めと、花の終わりの香りは違っている。

始めはメロンや熟れたベリーのにおいがする。
そして少しサリチル酸のようなクールな匂い、
そしてハーバルで力強い辛い香りもある。

やがてたっぷりとしたクリーミーな花の香り。


古い花はアニマリックな重さも出てくる。


草花の可憐な、触れなば落ちんという風情と対極に、
木に咲く花は他をよせつけない、気品がある。


私は、たやすくは手折れない、木の花になりたい。




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この花のどこに香りがあるのだろう。
蕊かしら、花びらかしら。


落ちてきたばかりの大きな花びらを食べてみる。
きゅうりのようなグリーンの味と、ラクトニックなゴムの味。


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朴の木の花の蕊(しべ)は野性味がある。
大きな蕊は、二段ロケットのように、雄蕊、めしべと時間差で開いてくる。

自家受粉を避けるために、時期をずらしてが成長するという。

そのあたりにも、花のにおい立ちの変化の理由があるのかもしれない。

続く


はなひらく、Hana Hiraku 、その時。パルファンサトリフレグランスストーリ-①

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凍(い)てついて固くしまった地面の上を、
風は漂流し、取り付く島もない。


それは確かに死んでしまったようにみえるけれども、
涸れてしまわなければ、過ごせない季節がある。



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秋に落ちた枯れ葉の、またその下の、前の前の落ち葉の積もったその下には、

ひっそりと命の根が眠っていて、


そしてもうこのまま起きられないのではという怖れと
しかしもうすぐ目覚めるに違いないという予感が、

対立してせめぎあい、拮抗(きっこう)が破れて、涙になる。



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樹はまたひとつ、身震いし、そして春が来る。


はなひらく、ハナヒラク、

Ēpanouir、エパヌイール、輝く、華ひらく。

AWAKE、アウェイク、目覚める。



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辛夷(コブシ)、白木蓮(ハクモクレン)、そして朴(ホオ)の花


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冬を耐え、固いつぼみの殻がはじけて白い花が咲く


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なよやかな草花の上で、力強い木の花がどんどんと開いていく


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朴(ホオ)の花の蕊(しべ)は、花開く意思を持つ





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「ハナヒラク」とき、道がひらける



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朴(ホオ)の木: 学名:Magnolia obovate 日本特産種


大木になると幹が直径1メートル、高さが30メートルにもなる落葉高木。朴(ホオ)の木の大きな葉に、味噌や餅を包んで焼いた朴葉みそ、朴葉餅や、皿として使うなど、日本では昔から生活に根ざした歴史があります。5月頃にクリームホワイトの20センチにもなる大きな花を枝先に咲かせ、その香りは風に乗って遠くまで届きます。

キンモクセイの香水 ソネット Sonnet / osmanthus

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キンモクセイの季節にはまだ少し早いのですが、今日は金木犀の花を思わせる熟れた黄金桃と一緒に、「ソネット」の写真を撮ってみました。


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パルファンサトリのキンモクセイの香り「SONNET (ソネット=叙事詩/小さな詩)」。

「ソネット」は、子供時代の幸せな思い出。
それはいつの世代にも繰り返し訪れる暖かい記憶を指しています。

この香りの中心にあるオスマンサス(きんもくせい)は、幼いころから私の大好きな花。
毎年、秋の透明な空気の中、このオレンジ色の花が咲くと「ああ、秋も深まってきた」と感じます。

でも、さみしい秋ではなく、実りの秋という充実感があり、それは子供時代の幸せな思い出とつながっています。



この香りに触れるとき、親や祖父母たちも、小さい頃にこの花の記憶があるのではないかしら、さらに次の世代まで、この花の香りを好きになってくれたらいいな、と願って「ソネット」を創りました。

ソネット(Sonnet )というのは、もともと「小さな詩」という意味で、イタリア風、フランス風、イギリス風ソネットなどあり、韻(いん)をふんだ14行からなる定型叙事詩です。

「ABAB CDCD EFEF GG」 という形式の、シェイクスピアのソネットは有名ですね。


「韻を踏む」が、何世代をも重ねて情景が想い出される。。。

そんなイメージで香水に名前をつけましたが、ここでは形式こだわらず、もう少し柔らかい形の「小さな詩」を書いてみました。


SONNET(叙事詩/小さな詩)

夕暮れ時の透明な日差しが
部屋の奥まで伸びて
花の香りが呼んだから
庭のテラスへおりてみた

橙色の星の花を
白いハンカチに包んで
私と似た面差しの
6つの少女が笑っている

花は時を告げるように
季節とともに巡ってくる

追憶のとき
少し褪せた家族の写真に
思い出が韻を踏んで
幾世代も訪れる

くり返し
ソネットのように






➤キンモクセイの香水 オードパルファン「SONNET(ソネット)」


トップはマンダリンのシトラスと、クラリセージエッセンスのティーノートから爽やかに始まります。そして甘い桃のようなオスマンサス(キンモクセイ)の香りは、やわらかいフローラルの広がりに。金木犀の天然香料も深みを与えました。

ニュアージュローズのできるまで② 南仏、グラースのローズ・ド・メ

| コメント(2)

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南フランス、グラースにある植物園では5月にバラが盛りとなる。

ニュアージュローズができるまで① バラ色の雲

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南仏のバラ色の雲、ニュアージュローズという名の香水。2011年。

 

パフューマー・大沢さとり

「パルファン サトリ」は、フランス調香師協会会員・SATORI(大沢さとり)の香水ブランドです。コレクションはすべてSATORI自身の処方により調合された特別感のある香り。初めて香水を試される方や、外国の強い香水に疲れた方にもお勧めです。日本の気候と情緒に合う、優しくおだやかな香りをお楽しみください。

SATORI'S ピックアップ

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