Parfum Satori

「香水とピアノの調べ」天秤ばかり balance scale

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前回、分銅について書いているうちに思い出すことがあった。今回はこの天秤の由来について書いてみたいと思う。

この調香用具は、2001年9月に開いたイベントに合わせるように、不思議な縁があって私の手元に来た。

それはPARCO毎日新聞カルチャーシティから「大沢さん、何か公開講座のイベントをやりませんか?」という誘いを受けたことから始まる。

2000年に「毎日カルチャーセンター」で初めての調香教室を持ったものの、なかなか生徒が集まらなかったため「宣伝のためにやってみましょう」ということだった。18年も前のことだから「香水を作る」ということ自体が、世の中にまったく理解されてなかったものと思われる。

そもそも調香が知られていないのだから、新しいことをわざわざする必要もないのだが、
「だれもやったことのないようなことをやりたい!」と思ったのは当時も今もそのまま。なぜか自分でハードルを上げてしまうのである。

担当の方と話しているうちに、頭に浮かんだのが「香水と音楽は共通点が多いので、一般の方に調香を紹介するのに組み合わせたら面白いのではないか」という考え。「香水とピアノの調べ」というタイトルにしたところ企画が通ってしまった。


まったくの思い付きである。タイトルを決めたが、どんなことをするかはほぼ白紙。ピアッスの香階表や、アコードやノートといった用語の共通点などが断片的に浮かんだ。だれかピアノを弾く人を探さないと・・・くらいで、ぼんやりとしかまとまっていない。

スタートは2000年の冬だったかと思うが、年も明けて初夏を迎えるくらいになり、新聞広告の打ち合わせや会場の下見とかだんだん現実味を帯びてくると、冷や汗が出る。あと4か月、どうしてよいやら本当にパニックになってきた。

今思うとずいぶん向こう見ずだったと思う。



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毎晩、悶々鬱々としていたところ、夜明け前、私の作った調香オルガン台の上に古い天秤が乗っている夢を見た。
昔は処方箋に従って香料を天秤で量った。だからオルガンの上には天秤が乗っているものだ。


目が覚めて「舞台に調香オルガン台とグランドピアノを並べて、脇机の上に置いたこの素敵な天秤を使って調香のプレゼンテーションをすればいい!」と思いついた。

そこからはどんどんと企画内容が思い浮かんできた。


しかし、まずは物語の中心となる、その天秤を探さなければならない。理化学屋さんを回って探し歩いたが、まさに化学実験用の無骨なものばかり。青い吹きつけ塗装も野暮ったい。とても理想のものとは違う。



ほどなくして、友人のガラス展示会が深大寺植物公園の近くで開かれるというので、見に行った帰りのことである。ちょっと汗ばむような5月の連休だったように思う。

素敵な展示を見た後、なんとなくそのあたりをぶらぶら歩いていたときに、アンティークショップというよりも、ごく普通のリサイクルショップがあった。それこそ、もらい物のスリッパとか、引き出物のペアグラスなどがおいてあるような店である。

たいした期待もなくフラッと入ったのであるが、雑多な生活用品などと並んで、この天秤が鎮座していたのである!!

「ああ!これだ!!夢に出てきた天秤はこれだ!!」

興奮したのを覚えている。とにかく「夢に見た恋人」を見つけたように、何よりもうれしかった。持って帰る道々も「本当かしら?」と、包みを何度も確かめた。


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実際のところ、夢にでてきたものと同じだったのかわからない。お店で見た瞬間に、夢の記憶が上書きされたのかもしれないとも思う。

台座には島津製作所とある。丸に十(くつわ)紋。素材は鉄。お皿はベークライド。この台座のところがすっきりと引き締まって本当に気に入っている。


たぶん、この天秤がいいと思ったり、前回紹介したアンティークの分銅が可愛いと思う人は、ピンポイントの趣味の世界なんだと思う。
だから、似て非なるものの違いがわかり、同じものを見て「いいな」と思う表情をその人に発見したときは、同志を見つけたように嬉しいものである。

アトリエにあるひとつひとつものに経緯(いきさつ)があり、私の好みがあり、気に入らないものは置きたくない。


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分銅も木の容器に入っていてかわいい。ピンセットもそろっていて、完璧なコンディションである。
今もアトリエの飾り棚の中に収まっている。

当時から、実際に使っているのはメトラー(電子ばかり)なのであるが、それでは味わいがない。この古典的な道具がバトンのように、夢の香水ワールドに魔法をかけるのである。




おそらく次は「香水とピアノの調べ」のイベントについて書くだろう。








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