Parfum Satori

2017年10月アーカイブ

今日のお花 菊と茄子 Halloween 

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ようやく、移転後の新しいアトリエにも慣れ、近くのお花屋さんとも徐々に顔なじみになった。六本木あたりでは、大きなバラの花束や、胡蝶蘭の鉢を気前よく買う人が多いようだ。

一方こちらは1本、2本と渋めの花を買う。はじめは気が引けたが、店主のおじさんがとても親切で、相談しながら買うのも楽しい。

秋も終わりになると、花の種類も減って菊が中心になる。いろいろ出してもらったがしかし、菊を3種もあわせると仏花のようだ。お勧めによって、あと一種類は、実物(みもの)にすることにした。


「ハロウィンだし、オレンジでまとめたら?」
「そうねえ、この、茄子がいいわあ」
「お、よく知ってるねえ」


などと掛け合いながら、これを買うことにした。昔はスーパーマーケットなんてなかったから、魚屋さんでも八百屋さんでも、こんな風にひと言、ふた言話しながら買い物をしたものである。


花器は唐金(からかね)にするか、迷ったが低めに切って梅の染付けの壷に活けた。となりに「茶壷の香水瓶」も飾ってみる。


気に沿う花がないとつまらない。しかし、少しのお花でも工夫次第で部屋が華やぐ。お部屋に一輪、一葉(ひとは)なりとも植物があるというのはいいものだ。





バードガーデン 六本木駅3番出口すぐ上


ブルーサルビア Salvia farinacea

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もう、路地のほうは終わってしまったが、少し前に活けたブルーサルビアの花が青くてきれいだったから、いまさらではあるが、アップすることにした。


昔は公園や家の庭に咲くサルビアと言えば、真っ赤な花のイメージだったけれど、薬用サルビア、すなわちコモンセージは寒色系が普通。

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ローズゼラニウム、ミントと一緒に小さなアレンジ。くねくねとした野生の葉の流れを活かしてまとめてみた。


お花大好き!






京都、東山から木屋町 ③Kyoto

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京都旅行といえば、小学校、中学校の修学旅行、そして親しい友達と行った大学の卒業旅行くらいだろうか。清水寺や法隆寺など、基本的な観光地には行ったはずであるが、記憶は写真のように断片的で、地理感がまったくない。

大人になってその後は、日帰り出張や大阪、神戸の行きかえりに駆け足で通り過ぎるだけ。ちゃんと街並みを歩いたり、ゆっくり食事をした記憶もないのである。

今回も3日間の催事に出展するべく来たので「お仕事」ではあるのだが、朝早くから会場に入るので、前日に京都に来ることにした。その日の午後に知人と会って、夕方から自由な時間が少しあったので、宿(やど)の近くを少し歩いてみたわけである。




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台風の前でぐずつく天気だが、折よく雨が止む。蹴上(けあげ)の方からだらだらと坂を下り、なんとなく気分で路地に入ったりまた大きな通りに出たり。
なんといっても、久しぶりの京都であるし、どこに何があるかなども不案内なまま、名所と呼ばれる建物などに遭遇するのを楽しむのである。

交差点から遠くに、赤い大きな鳥居(とりい)が見える。そういえば近所のホテルのコンシェルジュにこの辺の見どころを聞いたとき、「鳥居がどうとか...」言っていた気がする。そうか、これが平安神宮の大鳥居だったか。


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しかし、鳥居とは反対の方へ向かい、青蓮院(しょうれんいん)から知恩院(ちおんいん)の脇を通り過ぎる。雨上がりの夕暮れの道はさほど人通りもなく、しっとりとした空気が麗(うるわ)しい。

立派な樹が次々と現れるので胸がトキメク。白い漆喰(しっくい)の塀と瓦の濃い灰色、そして巨樹が相まって、千年の都の風格を感じさせる。

「ああ、私、いま京都を歩いているんだわあ...」
プチ自由の満喫。

20171028京都 青蓮院 楠.jpg

この道に入ったころから、芳(かぐわ)しい香りに包まれる。スパイシー、カンファーでリナロールのさわやかな香り。ブラックペッパーオイルの香りにも似ている。


少し歩いてやはりと思う。大きな楠(クスノキ)が現れ、その見事さに思わず足を止め見惚れてしまう。このあと、またクスノキの大木に出あって驚いた。全部で3本ほどあるらしい。

楠(クスノキ)からは樟脳液(カンファー、カンフル)が得られる。あの、だめになりかけた人や物事を蘇生させる「カンフル剤を打つ」というあれである。


同様の香りは新宿御苑を歩いているときもしばしば感じられる。御苑の森にも楠か芳樟(ホウショウ)があるのだろう。しかし、ここは一層強く、密度があるようだ。木の大きさもあるし、気圧や湿度のせいかもしれない。

気分の上がる理由は、この香りにもあるのだろう。


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「蓮如上人(れんにょしょうにん)御誕生之地」という石碑。ただもう、やたら歩いていても歴史的な名前に遭遇するのは、さすが古都である。

歴史小説が好きなのであるが、ここ一年は戦国時代から安土桃山あたりをよく読む。石山本願寺と顕如(けんにょ)のあたりは話によく出てくるので「帰ったらもう一度、歴史をおさらいしなくちゃ」などと思う。

江戸剣客(けんきゃく)ものを読んでいる時分は、江戸古地図を買って、その足取りを追ったりもしたものだ。

やたら楽しい。。。

20171025フジバカマ.jpg


そして、クマリンの香りに誘われて京都市都市緑化協会の庭に至ったわけである。

この感じ、何かに似ていると思ったら、風景は180度異なるけれど、パリの街を歩いているときと同じだと感じる。

ホテルを中心にして、ひとりでパリの石畳を歩き、坂を上りながら「そこの角を曲がったら何があるのだろう?」と好奇心と勘(かん)を頼りにほっつき歩く。面白そうなものを、比ゆ的にいわば犬のように嗅ぎまわるのである。




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すてきだなあ。あいまいな夕暮れに灯りがぼんやりとして、パリのルールブルー/L'HEURE BLEUE(青い時)とはひと味違うロマンチックさ。誰もが感傷的になれる場所。



いったん四条に出てまた三条へ上がり、そこから今日の目的地である木屋町(きやまち)へ。ちょうど新幹線の中で、池波正太郎の「その男」という小説を読んでいて、偶然にも薩摩、長州、幕府方の隠密が、この木屋町を中心に密かな戦いを繰り広げているところなのである。


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そしてまたここは森鴎外の小説で有名な高瀬川(たかせがわ)。小さな流れに沿った、濡れた小路に灯が揺らめいている。

「勉強になるなあ・・・。」

空想上の世界が、しっくりと馴染んでくる...というには、浅すぎる体験ではあるが。



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そして地元の人に紹介していただいた、「京都のおばんざい」が頂けるという「あおい」というお店に集合。こざっぱりとした店内には素敵な女将さんがいて、カウンターの大鉢においしそうな(実際とても美味しい)お料理がずらりと並んでいる。食いしん坊としては、写真を撮るのも忘れ、その味に恍惚(こうこつ)となる。

ほろ酔いの中、常連さんと女将さんのやりとりを音楽のように聴いている。決して自分で使うことはないが、その土地でその土地の言葉を聞くのは、耳にとても心地よいものだ。

しかし翌日からの仕事を考え、名残惜しいけれども早々に宿に帰り、びっくりするほど早く寝てしまったのだった。せっかくの京都なのに。。。


パリよりずっと近いし、またすぐに京都に来たいと思う、一夜であった。









ヤブコウジ エンコウソウ 絶滅寸前種 京都②kyoto

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京都の催事の前日に、あたりをうろうろしていて紛れ込んだのは「京都市都市緑化協会」のお庭先。たくさんのフジバカマの甘い香りに誘われて入ると、珍しい鉢がたくさんある。

花の時期ではないので、ほとんどが小さな苗だったり葉っぱだけだったり。なんという植物だろうと名札を見るも、あまり聞いたことのない名前。エンコウソウ(猿猴草)という、絶滅寸前種とか。

調べてみると花は黄色、池に咲くアサザに似ている。



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赤い実がかわいい、唐橘(カラタチバナ)。百両(ヒャクリョウ)とかいう。この名札にはカラタチバナの下にカッコして、ヤブコウジとも書いてあるが、同じものなのだろうか?

藪小路、別名十両(ジュウリョウ)はもうちょっと地味と思っていた。


似た名前に、千両(センリョウ)、万両(マンリョウ)などあり、いずれもお正月かざるおめでたい草花である。

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これは何の花かわからなかった。
ちょっと見たところ、センニンソウやボタンヅルにも似ているが、葉の形が違う。アシンメトリーな白い花びらがプロペラのようで面白い。



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遅咲きのアサガオ。建物にレエスのように下がって、とてもきれいだ。
海外の旅行客も盛んにこの前で写真を撮っていた。




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京都市都市緑化協会,知恩院から歩いて円山公園のあたり。


フジバカマ,藤袴,Eupatorium fortunei,京都①

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秋の七草のひとつ、フジバカマ(藤袴)である。 はじめつぼみは濃い小豆色だったものが、開くと淡くなり、ピンクのフワフワした雲のように見える。




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この日、京都での催事の前日夕方に、少しだけ会場の近く東山界隈をブラブラする。台風の前で天気はあいまい。細かい雨が降ったりやんだりしている。

知恩院の近くを通ると、さくら餅のような、甘いクマリンの香りが立ちこめている。あたりを見回し、フジバカマを発見。そうして門の中を覗いてみたらたくさんのフジバカマの鉢が育成中。

ひと鉢とか、路地にひと群れ咲いていたことはあるが、一度にこんなたくさんのフジバカマを見るのは初めてだ。

これだけの量があれば、確かに道にまで香りが漂ってくるはずである。



フジバカマの匂いは、クマリンやヘリオトロピンのような甘いパウダリーな香りで、このピンク色の雲のような花のイメージにきわめて似つかわしい。

ものの本には、フジバカマは乾燥しないと香らないと書いてあるし、私も以前はそう思っていた。しかし生花もよくにおう。環境や個体差があるのかもしれない。


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自由に入れるようなので庭の中に入ってみる。奥にはヤブコウジとか、エンコウソウとか地味な植木鉢がたくさん。

『なんだろ、植木屋さんかしら?だとしたらずいぶんシックな植物を集めているんだな』などと思い、『さすが京都、お茶屋さんや料亭に納めるのかしら?』

とひとりごちる。


 
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実はここは園芸店などではなく、京都市都市緑化協会という公益財団であった。京都駅から西へいった、「梅小路公園」というところの管理業務をしているらしい。京都における新宿御苑のようなものなのだろうか。

フジバカマは準絶滅危惧種である。こういった絶滅危惧種などを保護して育てているのだろう。
次はぜひ、この梅小路公園にいってみたいものである。



「萩(はぎ) 尾花(おばな) 葛花(くずばな) 瞿麦の花(なでしこ) 姫部志(をみなへし) また藤袴(ふじばかま) 朝貌の花(万葉集・巻八 1538)」に詠まれている。

植物事典 フジバカマ キク科 フジバカマ属 学名:Eupatorium fortunei,


和梨 なし Pyrus pyrifolia var. culta

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昔は梨(なし)といえば日本の梨しかなかったので、あえて和梨(わなし)とはいわなかったものである。日本でも「洋ナシ」が果物としてすっかりなじんだ結果なのだろうかと思うこのごろ。


この日、大きな梨をいただいた。アトリエで剥(む)いて、おやつにみんなで食べることになった。洋ナシのクリーミーな味わいに比べて、和ナシはさっぱりシャリシャリとしている。

子供のころは「長十郎」という甘いけれども固いナシか、「二十世紀」という瑞々しいが甘みの薄いナシしかなかったものである。しかし最近はハイブリッドが進んで、甘さ、瑞々しさ、大きさと三拍子そろったナシがいただけるようになった。



ナシの香りといえば、ヘキシルアセテート。みんなでムエットにつけて嗅ぎながら、梨を一口食べる。

「ヘキシルアセテートはやっぱり洋ナシの香りだよね」
「和梨はもっと薄くてさっぱりしている」
「ゲラニルアセテート、シトロネリルアセテートのほうが近い」

口々に感想。

「梨はバラ科の植物だから」
「えっそうなんですか?」
「さくらも桃もりんごもイチゴも、みーんなバラ科だよ」

「だからバラの構成要素である香料とこれら果実の香りには共通項がある」

などなど。

本の勉強も大事だけれど、実はこうした体験とか雑談の中にマメ知識があり、これが積もって身の肥やしになっていくのではと考えている。


気の長い話ではあるが、人生も長いものであるから、ゆっくり効いてくる肥料も大切なのである。






秋明菊(シュウメイギク)Japanese anemone

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秋明菊(シュウメイギク)は白がよい。

キク科ではなくキンポウゲ科の植物で、その姿は同じキンポウゲ科のアネモネやニリンソウなどを思わせる。


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今日、10月8日の誕生花は「秋明菊」。シュウメイギクと口にすれば音も心地よい。

すっきりと伸びた細い首の上に開く花は、可憐というより艶(えん)なるかな。美人、麗人というたたずまいは、和風というよりもやや中国風のイメージ。と思ったら、やはり古く、中国から来た帰化植物だという。



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花屋で買った後、しばらくバケツに入れていたが、花首がうなだれてしまった。1本の秋明菊には3つの枝がつき、それぞれの枝はさらに3~4輪の花がつく。一つの茎に対して花が多すぎて、水揚げが足りなくなってしまったためである。

急いで枝の太いところで3本に切り分け、再び深い水差しの中に入れておくと、しっかりと花首をあげてくれた。
この固いつぼみまで全部開くといいのだけれど。



アトリエに花があると、手はかかるけれど心が和(なご)む。
水を替え、切り戻し、花の位置を変えて最後まできれいに活けられると、自分ながらよくやったと満足する。

切り花は手入れを怠るとすぐに枯れたり水が汚れたりする。そのためこまめに世話するが、鉢物だとつい油断して枯らしてしまうこともあるので、かえって難しいと感じている。


中秋の名月 Harvest moon

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2017年の中秋の名月は10月4日。この日、思いついて近所の花屋に赴き、ススキを買う。「鷹乃羽(葉が矢羽のように斑になっている)」は穂がすでに開いていたので、普通のにした。さらに今日は月見だから、月見団子のイメージとして、本当は白いボンボン菊を買うつもりだったのだが、市場から入ったばかりの黄色い菊を勧められる。

「そうね、月に見立てて黄色でもいいかな」「あれ?1本でいいの?」「月が3つもあったらおかしいでしょ」などと店主と軽口をたたきながら菊を一本と吾亦紅(われもこう)も買った。「吾亦紅は引き締まったやつにして」などと、こんなちょっぴりの花を買うのに、注文の多い客である。

ススキ、吾亦紅といった野の花も、都会では値段がつくから面白いものである。とはいえ久しぶりに花を買ったのでなんとなくウキウキ。アトリエに戻って、たっぷりの水でしばらく水揚げし、唐金(からかね)の花入れに挿してみた。背が高いのでおき場所を探しうろうろとする。白い壁の前に置いた。


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10月4日が中秋の名月 だが満月 は6日。アトリエの窓から眺めた月。11時ころ、そろそろ仕事を終えようかなと空を見れば、ほぼ南の空に上がっている。


「十五夜 の雲のあそびてかぎりなし」 (後藤夜半) 

与一「あれ、十五夜が満月じゃないんで?」 
さとり「月は楕円軌道を描いているので、地球に近いときは早く進むのじゃと。よって満月の時期が十五番目の夜とは限らず、ずれることもあるという。摩訶不思議のことよのう」




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月見団子とうさぎ饅頭。花を飾ったり月を見たり、こんな風に歳時記を楽しむことができてとてもうれしい。

自分のために時間を使う。冗費でなく、日常のちょっぴりの贅沢が、本当に暮らしを豊かにしてくれるとしみじみと思うこの頃である。








「織部」Oribe Fragrance story ② 織部の香りができるまで

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よく「名前と香りのどちらが先にできるのですか?」と聞かれるが、その時々で違う。

先にテーマが決まって、香りがその目標に向かっていくこともあるし、出来上がってからしっくりくる名前を付けるのに苦労することもある。このときの作成途中の仮称は「抹茶」で、正式なネーミングは後からついた。できあがったときに、「抹茶」では工夫がないと思い、あれこれ書いては消しているうちに、「織部(おりべ)」という名前が浮かび上がったのである。


「古田織部(ふるたおりべ/重燃)」は、千利休の高弟の一人で16世紀の茶人である。千利休の茶道を継承しつつ「人と違うことをせよ」という教えを忠実に実行したと評される。大胆で自由な気風で、美の新しい価値観を茶の世界に作り、作庭、建築、焼き物など「織部好み」という一大流行をもたらした。400年も前にデザインされた濃い緑と黒の焼き物は今なお新しい。


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私が初めて織部の名を知った時は定かではないが、母が使う茶器を見ながら覚えたものと思われる。
その後、12歳で正式に入門し茶道を習い始めた。師匠のもと、あるいは母のそばで茶に接しているうちに、折りに触れ少しずつ聞きおぼえた物語りが、いつか身の内に降り積もって、数十年後にこの香水の名として浮かび上がったものであろう。いわばこの名は、母の手柄である。


織部についてもっとよく知りたいと、改めて本などを読んだのは、香水に名を付けた後であった。司馬遼太郎は「おそらく世界の造形芸術史のなかで、こんにちでいう前衛精神をもった最初の人物」と評している。

なぜ香水名が「利休」でなく「織部」なのかと尋ねられたことがある。ひらめきは理屈ではないが、しいていえば利休はよく知られており、織部を知っている人は少なかったからではないか。「人と同じことはしたくない」と思う。

「さとり」という香りが沈香木の再現のみならず、「和室の清浄な空間、そこに入る人の佇まい」をも表現したかったのと同じように、「織部」の香りもただ爽やかなだけのグリーンティとは一味違う、日本の茶の香りと、「茶を点てて振る舞う心のありよう」まで捉えたかったのである。



「織部」はわずかに苦い。シス-ジャスモン(cis-Jasmon)が効いている。これはジャスミンノートに入る単品香料だが、渋み、苦みを感じさせる香料である。

そして「旨み」としてバイオレットリーフを少し入れている。バイオレットリーフの香調はキュウリっぽいといわれるが、私には乾物の、例えば昆布出汁の匂いを感じるから。 

すっきりとしたグリーンだけでは少し膨らみが足りないので、フローラルを合わせてボディ感を出した。

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「茶の木」も「さざんか」も「椿」も、同じツバキ科の植物である。サザンカは晩秋に咲き、椿は春にかけて咲く。そしてお茶の花が咲くのは12月。白い、小さなツバキのような可憐な花である。
香りも良い。サザンカの香りに近く、ヘディオン(Hedion)という香料の匂いがする。ヘディオンはジャスミンの要素でもある。それゆえ「ティーノート」と「ジャスミン」の香りは合いやすい。

そこでジャスミンabs.を足して、花のボリューム感を出した。 

また、お薄茶(うすちゃ)を点てた時の泡立ちとパウダリー感のために、イリスバターを入れ、他にも様々な天然香料が入り、単調になりやすいグリーンタイプに複雑さを与えた。 


私にとっての緑茶、ことに抹茶はさわやかさと苦味と旨味のバランスが良さであり、豊かさであると思っている。

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我が家では毎朝、抹茶を飲む習慣がある。振る舞うわけでなないが、自分のために準備を整えて飲んだ時にはすっきり目覚めて心も改まる。とはいえ「毎朝の一服」として、インスタグラムで写真をアップしているように、それは誰もが季節を楽しむのと同じような気楽なもの。

茶道では11月は「炉開き」の月。茶事に「織部」と名のつく焼物を使うきまりがあると言われているが、「織部」の香水は、日々、心が改まる時々で心地よく皆さまのまわりで香っていられたらと願っている。


 


「織部」Oribe Fragrance story ①世界のグリーンティノートの変遷

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ヴァン・ヴェール(ピエール・バルマン)が1946年に発売されて以来、グリーンタイプはグリーンを強調したり、フローラルやシトラスに振れたりしながら今日まで続いてきた。

その中で、緑茶ノートの香水は1990年頃から始まったとされている。1999年エリザベスアーデンの「Green Tea(グリーンティ)」は、緑茶の香りをテーマにした新しいグリーンとして注目された。

しかしその香りは「グリーンティ」というカタカナをあてるのがふさわしい。香調は爽やかで透明感がある。日本人の自分から見れば、むしろレモンティに近いと感じたものである。


その後も、緑茶を謳った香水のヒット作が続く。むろん、緑茶イコール日本茶とは限らない。
今から20年前のパリ。当時は海外にまだ「日本茶」はあまり知られていなかったと思う。

フランスの家庭で「グリーンティ」といって出されるお茶は中国緑茶に近く、日本人が馴染んだみずみずしい緑や香りとはほど遠いものだった。(中国には緑茶、白茶、黒茶、紅茶、青茶がある)

逆に、日本に来た外国の人に抹茶を出しても「苦すぎる」と当時は人気がなく、砂糖をくださいと言われたことがある。抹茶があまりにもきれいな緑色をしているので、「てっきり着色していると思った」とフランスの人が言うのを聞いてびっくりしたこともある。


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そもそも、パリに和食店は少なかった。しかし「和食文化」が次第に浸透し、寿司店(経営は日本人とは限らないが)が飛躍的に増え、やがてパリのお蕎麦屋さんで上手に箸を使う外国人も目にするようになった。

一方で、日本ではペットボトル入りの緑茶が1992年に売り出され、急須で入れるリーフティよりも簡便に飲めるということで2004年ころまでに急成長する。どちらかというと、飲みやすさ、まろやかさなどが強調されていたと思う。

その頃から、いつか日本のお茶にある渋み、苦味、うまみまで表現した香りを作ってみたい、という気持ちが芽生えた。特に、茶葉を引いて粉にした「抹茶」。お薄茶(うすちゃ)を点てた時の泡立ちまで表現したいと考えたのである。

「織部」は2008年、ブランドとして最初に発売した10本の香水のうちのひとつであるが、発売から数年間「織部」はさほど注目されていなかった。


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フレグランス界でも2000年以降、グルマンやフルーティ・タイプなど、甘く、より甘く、わかりやすい香りが流行。その中で繊細なグリーンティのタイプは埋没してしまったかのようだ。

そんな折、食の世界の抹茶ブーム。日本文化が海外にも広く知られるようになり、健康志向ともあいまって、セレブから中心に広まったようである。今では、抹茶ラテといった飲み物や、ケーキ、クッキーなどお菓子には当たり前の素材になっている。


こうして一度落ち着いたものの、世界中で食品としての抹茶フレーバーが盛んになったためか、あるいは日本の侘(わ)び、寂(さ)びなども海外で興(おも)しろく思われたものか、この数年は、再びグリーンティ、あるいは抹茶や茶道をテーマにした香水が海外ブランドにみられるようである。


それでも、ヨーロッパへ日本から持っていった新茶などおみやげに出せば、やはり彼らには強すぎるらしく、午後3時以降は飲めない(眠れなくなるから)と言う。確かに、日本茶はカフェインが強い。 

しかし「すし」もブームではなくきちんと定着しつつあってポピュラーになり、食材も海外でずいぶん手に入りやすくなった。少しずつ本当の日本の味が浸透していくのは嬉しい。

食と香りは、後になり先になり、共鳴しながら流行しているようだ。とはいえ茶道がそうであるように、流行の中にあっても芯のぶれないものというものがあり、「織部」もしかり、そういう流されないものをこれからも作って行きたいと思っている。

「織部」Oribe お客様のご感想




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