Parfum Satori

2017年10月アーカイブ

和梨 なし Pyrus pyrifolia var. culta

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昔は梨(なし)といえば日本の梨しかなかったので、あえて和梨(わなし)とはいわなかったものである。日本でも「洋ナシ」が果物としてすっかりなじんだ結果なのだろうかと思うこのごろ。


この日、大きな梨をいただいた。アトリエで剥(む)いて、おやつにみんなで食べることになった。洋ナシのクリーミーな味わいに比べて、和ナシはさっぱりシャリシャリとしている。

子供のころは「長十郎」という甘いけれども固いナシか、「二十世紀」という瑞々しいが甘みの薄いナシしかなかったものである。しかし最近はハイブリッドが進んで、甘さ、瑞々しさ、大きさと三拍子そろったナシがいただけるようになった。



ナシの香りといえば、ヘキシルアセテート。みんなでムエットにつけて嗅ぎながら、梨を一口食べる。

「ヘキシルアセテートはやっぱり洋ナシの香りだよね」
「和梨はもっと薄くてさっぱりしている」
「ゲラニルアセテート、シトロネリルアセテートのほうが近い」

口々に感想。

「梨はバラ科の植物だから」
「えっそうなんですか?」
「さくらも桃もりんごもイチゴも、みーんなバラ科だよ」

「だからバラの構成要素である香料とこれら果実の香りには共通項がある」

などなど。

本の勉強も大事だけれど、実はこうした体験とか雑談の中にマメ知識があり、これが積もって身の肥やしになっていくのではと考えている。


気の長い話ではあるが、人生も長いものであるから、ゆっくり効いてくる肥料も大切なのである。






秋明菊(シュウメイギク)Japanese anemone

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秋明菊(シュウメイギク)は白がよい。

キク科ではなくキンポウゲ科の植物で、その姿は同じキンポウゲ科のアネモネやニリンソウなどを思わせる。


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今日、10月8日の誕生花は「秋明菊」。シュウメイギクと口にすれば音も心地よい。

すっきりと伸びた細い首の上に開く花は、可憐というより艶(えん)なるかな。美人、麗人というたたずまいは、和風というよりもやや中国風のイメージ。と思ったら、やはり古く、中国から来た帰化植物だという。



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花屋で買った後、しばらくバケツに入れていたが、花首がうなだれてしまった。1本の秋明菊には3つの枝がつき、それぞれの枝はさらに3~4輪の花がつく。一つの茎に対して花が多すぎて、水揚げが足りなくなってしまったためである。

急いで枝の太いところで3本に切り分け、再び深い水差しの中に入れておくと、しっかりと花首をあげてくれた。
この固いつぼみまで全部開くといいのだけれど。



アトリエに花があると、手はかかるけれど心が和(なご)む。
水を替え、切り戻し、花の位置を変えて最後まできれいに活けられると、自分ながらよくやったと満足する。

切り花は手入れを怠るとすぐに枯れたり水が汚れたりする。そのためこまめに世話するが、鉢物だとつい油断して枯らしてしまうこともあるので、かえって難しいと感じている。


中秋の名月 Harvest moon

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2017年の中秋の名月は10月4日。この日、思いついて近所の花屋に赴き、ススキを買う。「鷹乃羽(葉が矢羽のように斑になっている)」は穂がすでに開いていたので、普通のにした。さらに今日は月見だから、月見団子のイメージとして、本当は白いボンボン菊を買うつもりだったのだが、市場から入ったばかりの黄色い菊を勧められる。

「そうね、月に見立てて黄色でもいいかな」「あれ?1本でいいの?」「月が3つもあったらおかしいでしょ」などと店主と軽口をたたきながら菊を一本と吾亦紅(われもこう)も買った。「吾亦紅は引き締まったやつにして」などと、こんなちょっぴりの花を買うのに、注文の多い客である。

ススキ、吾亦紅といった野の花も、都会では値段がつくから面白いものである。とはいえ久しぶりに花を買ったのでなんとなくウキウキ。アトリエに戻って、たっぷりの水でしばらく水揚げし、唐金(からかね)の花入れに挿してみた。背が高いのでおき場所を探しうろうろとする。白い壁の前に置いた。


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10月4日が中秋の名月 だが満月 は6日。アトリエの窓から眺めた月。11時ころ、そろそろ仕事を終えようかなと空を見れば、ほぼ南の空に上がっている。


「十五夜 の雲のあそびてかぎりなし」 (後藤夜半) 

与一「あれ、十五夜が満月じゃないんで?」 
さとり「月は楕円軌道を描いているので、地球に近いときは早く進むのじゃと。よって満月の時期が十五番目の夜とは限らず、ずれることもあるという。摩訶不思議のことよのう」




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月見団子とうさぎ饅頭。花を飾ったり月を見たり、こんな風に歳時記を楽しむことができてとてもうれしい。

自分のために時間を使う。冗費でなく、日常のちょっぴりの贅沢が、本当に暮らしを豊かにしてくれるとしみじみと思うこの頃である。








「織部」Oribe Fragrance story ② 織部の香りができるまで

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よく「名前と香りのどちらが先にできるのですか?」と聞かれるが、その時々で違う。

先にテーマが決まって、香りがその目標に向かっていくこともあるし、出来上がってからしっくりくる名前を付けるのに苦労することもある。このときの作成途中の仮称は「抹茶」で、正式なネーミングは後からついた。できあがったときに、「抹茶」では工夫がないと思い、あれこれ書いては消しているうちに、「織部(おりべ)」という名前が浮かび上がったのである。


「古田織部(ふるたおりべ/重燃)」は、千利休の高弟の一人で16世紀の茶人である。千利休の茶道を継承しつつ「人と違うことをせよ」という教えを忠実に実行したと評される。大胆で自由な気風で、美の新しい価値観を茶の世界に作り、作庭、建築、焼き物など「織部好み」という一大流行をもたらした。400年も前にデザインされた濃い緑と黒の焼き物は今なお新しい。


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私が初めて織部の名を知った時は定かではないが、母が使う茶器を見ながら覚えたものと思われる。
その後、12歳で正式に入門し茶道を習い始めた。師匠のもと、あるいは母のそばで茶に接しているうちに、折りに触れ少しずつ聞きおぼえた物語りが、いつか身の内に降り積もって、数十年後にこの香水の名として浮かび上がったものであろう。いわばこの名は、母の手柄である。


織部についてもっとよく知りたいと、改めて本などを読んだのは、香水に名を付けた後であった。司馬遼太郎は「おそらく世界の造形芸術史のなかで、こんにちでいう前衛精神をもった最初の人物」と評している。

なぜ香水名が「利休」でなく「織部」なのかと尋ねられたことがある。ひらめきは理屈ではないが、しいていえば利休はよく知られており、織部を知っている人は少なかったからではないか。「人と同じことはしたくない」と思う。

「さとり」という香りが沈香木の再現のみならず、「和室の清浄な空間、そこに入る人の佇まい」をも表現したかったのと同じように、「織部」の香りもただ爽やかなだけのグリーンティとは一味違う、日本の茶の香りと、「茶を点てて振る舞う心のありよう」まで捉えたかったのである。



「織部」はわずかに苦い。シス-ジャスモン(cis-Jasmon)が効いている。これはジャスミンノートに入る単品香料だが、渋み、苦みを感じさせる香料である。

そして「旨み」としてバイオレットリーフを少し入れている。バイオレットリーフの香調はキュウリっぽいといわれるが、私には乾物の、例えば昆布出汁の匂いを感じるから。 

すっきりとしたグリーンだけでは少し膨らみが足りないので、フローラルを合わせてボディ感を出した。

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「茶の木」も「さざんか」も「椿」も、同じツバキ科の植物である。サザンカは晩秋に咲き、椿は春にかけて咲く。そしてお茶の花が咲くのは12月。白い、小さなツバキのような可憐な花である。
香りも良い。サザンカの香りに近く、ヘディオン(Hedion)という香料の匂いがする。ヘディオンはジャスミンの要素でもある。それゆえ「ティーノート」と「ジャスミン」の香りは合いやすい。

そこでジャスミンabs.を足して、花のボリューム感を出した。 

また、お薄茶(うすちゃ)を点てた時の泡立ちとパウダリー感のために、イリスバターを入れ、他にも様々な天然香料が入り、単調になりやすいグリーンタイプに複雑さを与えた。 


私にとっての緑茶、ことに抹茶はさわやかさと苦味と旨味のバランスが良さであり、豊かさであると思っている。

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我が家では毎朝、抹茶を飲む習慣がある。振る舞うわけでなないが、自分のために準備を整えて飲んだ時にはすっきり目覚めて心も改まる。とはいえ「毎朝の一服」として、インスタグラムで写真をアップしているように、それは誰もが季節を楽しむのと同じような気楽なもの。

茶道では11月は「炉開き」の月。茶事に「織部」と名のつく焼物を使うきまりがあると言われているが、「織部」の香水は、日々、心が改まる時々で心地よく皆さまのまわりで香っていられたらと願っている。


 


「織部」Oribe Fragrance story ①世界のグリーンティノートの変遷

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ヴァン・ヴェール(ピエール・バルマン)が1946年に発売されて以来、グリーンタイプはグリーンを強調したり、フローラルやシトラスに振れたりしながら今日まで続いてきた。

その中で、緑茶ノートの香水は1990年頃から始まったとされている。1999年エリザベスアーデンの「Green Tea(グリーンティ)」は、緑茶の香りをテーマにした新しいグリーンとして注目された。

しかしその香りは「グリーンティ」というカタカナをあてるのがふさわしい。香調は爽やかで透明感がある。日本人の自分から見れば、むしろレモンティに近いと感じたものである。


その後も、緑茶を謳った香水のヒット作が続く。むろん、緑茶イコール日本茶とは限らない。
今から20年前のパリ。当時は海外にまだ「日本茶」はあまり知られていなかったと思う。

フランスの家庭で「グリーンティ」といって出されるお茶は中国緑茶に近く、日本人が馴染んだみずみずしい緑や香りとはほど遠いものだった。(中国には緑茶、白茶、黒茶、紅茶、青茶がある)

逆に、日本に来た外国の人に抹茶を出しても「苦すぎる」と当時は人気がなく、砂糖をくださいと言われたことがある。抹茶があまりにもきれいな緑色をしているので、「てっきり着色していると思った」とフランスの人が言うのを聞いてびっくりしたこともある。


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そもそも、パリに和食店は少なかった。しかし「和食文化」が次第に浸透し、寿司店(経営は日本人とは限らないが)が飛躍的に増え、やがてパリのお蕎麦屋さんで上手に箸を使う外国人も目にするようになった。

一方で、日本ではペットボトル入りの緑茶が1992年に売り出され、急須で入れるリーフティよりも簡便に飲めるということで2004年ころまでに急成長する。どちらかというと、飲みやすさ、まろやかさなどが強調されていたと思う。

その頃から、いつか日本のお茶にある渋み、苦味、うまみまで表現した香りを作ってみたい、という気持ちが芽生えた。特に、茶葉を引いて粉にした「抹茶」。お薄茶(うすちゃ)を点てた時の泡立ちまで表現したいと考えたのである。

「織部」は2008年、ブランドとして最初に発売した10本の香水のうちのひとつであるが、発売から数年間「織部」はさほど注目されていなかった。


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フレグランス界でも2000年以降、グルマンやフルーティ・タイプなど、甘く、より甘く、わかりやすい香りが流行。その中で繊細なグリーンティのタイプは埋没してしまったかのようだ。

そんな折、食の世界の抹茶ブーム。日本文化が海外にも広く知られるようになり、健康志向ともあいまって、セレブから中心に広まったようである。今では、抹茶ラテといった飲み物や、ケーキ、クッキーなどお菓子には当たり前の素材になっている。


こうして一度落ち着いたものの、世界中で食品としての抹茶フレーバーが盛んになったためか、あるいは日本の侘(わ)び、寂(さ)びなども海外で興(おも)しろく思われたものか、この数年は、再びグリーンティ、あるいは抹茶や茶道をテーマにした香水が海外ブランドにみられるようである。


それでも、ヨーロッパへ日本から持っていった新茶などおみやげに出せば、やはり彼らには強すぎるらしく、午後3時以降は飲めない(眠れなくなるから)と言う。確かに、日本茶はカフェインが強い。 

しかし「すし」もブームではなくきちんと定着しつつあってポピュラーになり、食材も海外でずいぶん手に入りやすくなった。少しずつ本当の日本の味が浸透していくのは嬉しい。

食と香りは、後になり先になり、共鳴しながら流行しているようだ。とはいえ茶道がそうであるように、流行の中にあっても芯のぶれないものというものがあり、「織部」もしかり、そういう流されないものをこれからも作って行きたいと思っている。

「織部」Oribe お客様のご感想




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